まずはエールがシーツの所為でぬれてしまった服を着替えてから、という事で一回着せ替えタイムを挟んでから科学部屋に飛び込んでエールがその格好のまま話し始めた。誰に貰ったのか知らないが、そのメイド服…よく似合いすぎてて眩しいというか、後ろは知る事すら許されない気がしてお姉ちゃんはちょっとだけ、ちょっとだけ着せ替えに目覚めてしまいそうです…!
「 あなた…。ゲーデを見た、ですって! 」
「 うん。多分だけど、そうだと思う 」
けろっとした返事をするメイドさん。ここにゼロスとかいなくて本当によかった。もう本当によかった。この格好を見て今まで以上に死に対する執着がなくなりそうだ。このまま天国にいけたらどれだけいいんだろうか!
「 世界樹が傷ついた時に出てきた者が、ゲーデと名乗ったのね 」
「 そうか、 」
少し落ち着こう。もうゲーデとか、可愛いとか思ってる場合じゃないんだ。少し冷静になれば事は落ち着くかもしれないんだ。さあ、私。気合を入れて、深呼吸をしてからこの話に挑もうじゃないか。なんだかもう遅い気がするけれどまだ、間に合うはず
「 既にゲーデは現れていたのか。私が正気を失っている間に。ぬかった… 」
「 でも、この方はディセンダーだとしても世界樹が傷つく前に、この船にお出でになったのよ? 」
そんな考え事をしているとパニールが首をかしげた。
「 ディセンダーは、お話によると世界に危機が訪れた時に現れるのでは… 」
「 世界の危機は、とっくに訪れてたって事ね。世界樹は傷つく前から、負を抱える容量の限界を迎えていたのよ 」
ハロルドの発言でフィリアが顔をしかめる。麗しの神官が顔をしかめたところで結局は美しいという事実は変わらないんだけど、それ以前の問題で世界樹を追いやったという事実が浮上し始めた。限界をこえていたのにとどめを刺したといわれても間違いではないはずだ。否定が出来たらどれだけいいんだろう
「 マナの生産量は落ち、負をこれ以上抱えることも出来ず、世界に留まった負からラルヴァを生成されてしまう程にね! 」
容量オーバー。受け入れる事に寛容すぎるんだな、世界樹は。つまりエールのお母さんは、優しすぎるんだね。優しいって言うのは傷つく。その傷つくのさえも考慮して飲み込む優しさは、あまりにも酷な気がする。
「 それだけでも十分、世界にとっては危機的状況よ。挙句、そのゲーデまで解放してしまった 」
「 負…。私達が生み出す、怒りや妬み、悲しみ… 」
だけど、その負の容量を超えたのをディセンダーはどうすればよかったんだろう。ほかに負を何とかする方法があったというんだろうか。何百年もすれば、世界樹はまた容量オーバーになるんじゃないのか?そうしたら、誰が、
「 それが世界樹にここまで負担を掛けていたなんて… 」
誰がその負を受け入れるんだろう。
そう思った瞬間にフィリアは呟いていた。負担をかけてしまったと、私達の気持ちの一部は世界樹にとってそんなにも負担になるんだろうか。負担になるんだったらどうして私達の負を受け入れてくれるのか、まったくわからない。
「 浅葱、またアンタ面白い事を考えてるんじゃないわよね? 」
「 ん?いや、単なる妄想みたいなものだから気にしないでもいいんだけどさ 」
「 なになに? 」
「 今、世界樹を治しても。またいつか世界樹は負の容量オーバーになるから、繰り返されるんじゃないのかなあって 」
「 ……また違う方向からもってきてるけど、それは世界樹の回復の後ね。流石に方法を考えても今は実行しようにないでしょ 」
「 だよねえ 」
私達のために頑張ってくれる世界樹は、弱った根の中で必死に残った負を受け入れようとしていた。その世界樹のしていることは他人の厄介ごとに首を突っ込んで被害を真に受けているようなものなのに
「 なんか、納得いかないんだよなあ 」
「 何が納得いかないって? 」
「 人の気持ちは人じゃわからないなあって思って 」
まあ、人じゃないけれど。と呟けばハロルドが首をかしげた。流石に私の言っている事は変なのかもしれないけれどまあ、変だとしてもこれはしょうがないだろう。
気になるお年頃なんだよ、きっと( 疑問には必ず全てに答えがあるとは誰も言わなかった )
( あるのは数学くらいで )
( 他には回答がないのだから自分で納得できるものだけど探す )
11/0221.
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