「 ねえ、浅葱お姉ちゃん 」

「 うん?なあに 」



幸いというか化粧で誤魔化せる程度の瞼の赤さが残った私達は昨日迷惑をかけてしまったという事で私は変わらないんだけど、エールも一緒に洗濯物を干していた。しかもよりによって今日はシーツもときた。この間は布団で次はシーツを干すだなんて!と思うけれどやっぱり迷惑かけたし、しょうがないか。しょうがない。洗濯バサミが足りないのもしょうがない



「 なんでだろうね 」

「 なにがー? 」

「 海が広くて空が大きいのはなんでかなあって 」



最近切り替えが早いと噂されているエールはシーツを干しながらぼうっと空を見てから海を見る。なんかさっきから首を上下に動かしてるなあとか思ったらそういう事だったのか。沢山の洗濯バサミを握ったままぼんやりと空と海を見るエールは、前にカモメを見ていたときと同じだ



「 うーん、そうだねぇ 」

「 それにどっちも青色! 」

「 でも空は色が変わっちゃうよ? 」

「 あ、そっか… 」



ああ、癒される。もうシーツとか干さないで真剣に考え始めてるところがもう可愛いああ可愛い。なんて可愛いの!くそう、甘やかすなって言われても私が白髪が生えるまでは甘やかし続けてやる!でも、最近白髪発見されたけどね!…疲れてるのかな



「 エールさん、浅葱さん 」

「 プレセアだ。どうしたの?ジェイドが何か言ってた? 」

「 いえ、そうではなくて 」

「 うん? 」



プレセアは少し悩んだように、口を開く。私とエールの手はスッカリ止まってしまい冷たいシーツが顔面に当たる。いや、駄目だってファンデーションついたらやり直しだから!このゆるい雰囲気についつい忘れそうになってしまう…だめだなあ、私



「 リフィルさん達が話していた『ゲーデ』という者… 」

「 …ゲーデ? 」

「 心当たり、ありませんか? 」



なんだ、あの可愛い子の事か。
いやいやいや、ここは真剣なシーンなんだからシーツ干しながら話聞かないと。肌色になってしまう!そう思って横を見るとエールは冷たいシーツを抱きしめながら首をかしげた。その服、すぐに着替えさせないと風邪ひくんだろうな



「 世界樹の傷から、負と共に現れたあの男です… 」

「 …あの、お姉ちゃんを…どうしようか戸惑ってた人!!! 」



もの凄い誤解を招いてる気がする。戸惑う以前の問題で私が止めてしまったというか、無理やり抑えたというか。彼は私に触れられて何を思ったんだろう。やっぱり、怖いと思ってしまったのかな。それだったらさびしい、けど



「 同一人物かはわかりませんが、リフィルさんに伝えた方がいいんじゃないかと思って 」

「 うん。そうだね、リフィル先生に言わないとお尻ペンペンされちゃうもんね。ちょっと待ってて、すぐに干すから! 」

「 はい 」



それはこの間ロイドがペンペンされてたのを見てた影響ですか。私は個人的にこの歳になってというかペンペンされたくないのでなるべく逆らわないようにしてます。あの人に子供っぽいところを見せたら容赦なくあの手が襲い掛かってくると考えているので、まだ大丈夫!



「 ああ、そうだプレセア 」

「 なんでしょう? 」

「 海が広くて空が大きいのはなんでだとおもう? 」

「 え? 」

「 私はさ、 」



この回答にもあの子の未来を決める気がして口に出せないんだ



「 お姉ちゃんまだ? 」

「 ん?すぐにいくよ? 」



そう返事をして洗濯バサミをエールからとって、髪の毛と同じ色の洗濯バサミを白に止めた。真っ白の中に染まった色が一つだけ。ポツンと浮いているような錯覚と、何色にも染まる事がないような強さが見えて、振りかえる



「 そういえば、お空も海も同じなんだから、大きくて広いのも同じなのかなあ? 」

「 でも、空の方が大きいんだよ 」

「 ええ!! 」

「 それに、大きくて広い理由はね 」



振り返った先に見えた君色の髪をそっと撫でて
私は意地悪な気持ちで笑った



( 海には魚が住んでいて、空には鳥がすんでいるでしょう? )
( うん )
( 住むっていうのは生きる事。生きる事は、命の証 )
( あかし、 )
( とっても、大事なものなんだよ )

11/0221.




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