「 世界は大きく変わる。大地は魔物で溢れ、人々は生きて行く力を失い、かつてない災害を見るだろう 」



それでも話は続く。私はぼんやりと全く違う事を考えていても話は進んでいく。多分村の小娘Aとかドラク○でいうク○フトあたりの立ち位置でも話はサラサラと進んでいただろう。馬車係りだ。馬車要員。ボス前の回復は彼にお任せ!



「 カモメ達に聞いたんですけれど、今は世界のあちこちで負が噴出しているそうですよ 」



世界樹が請け負っていた全ての負が大地に浸透して、蓄積されたエネルギーが爆発したんだろう。それにしてもカモメと話が出来るって羨ましい。たまに話をしているのを聞くけれど私にはカモメがなんていってるのかわからなくて首をかしげた瞬間カモメの襲撃というか洗礼を受けてしまったんだけども



「 死人が動き出し、人々を襲うという恐ろしい話も聞きます。それも、負によるものなのですね 」



カモメ情報からゾンビニュースへと変わりました。元は人間と言っても、ゾンビになってしまえば、人間としての理性や知性を失ってしまえばただの肉片であると。あとは人間らしくない死に方をすると人間とは認められないらしい。動く肉片。肉片って思うたびに焼肉用のパック肉が頭に出てくるのは何でだろうか



「 それよりも、我々精霊が恐れるものは、『ゲーデ』。負の想念の化身だ 」

「 …ゲーデ? 」



聞き覚えのない言葉にリフィルが繰り返す。
私はそのゲーデに触れましたけどね、もうべったべたに触れる気でした。今はべったべたに触りつくしたいです。特にあの右腕。



「 人間の世界に現れ出でた事はないから、知らぬだろう。精霊のみが認知している存在だ 」



知ってるよ。



「 ゲーデは人々の負の感情の塊にして、その化身でもある。全てのものに対して、敵意を抱く 」



敵意じゃない。あれはただの恐怖だ。怖くて怖くて仕方が無いから自分の腕を振るう。怖いからって逃げる事が出来なくて、あがくみたいに必死に喘いで、怖いを振り払おうとしているだけなんだよ。怖いものを怖いといえない。嫌なものを嫌といえずにただ、ただ、押しつぶされそうになりながら



「 本来であれば、世界樹内部で生まれ、そして消え、再び生まれるのを繰り返すだけの存在だ 」



自分の気持ちを塞ぎこんでしまった小さな子供を。
そんな過小評価して、悪いと決め付けないで



「 しかし、世界中の精霊の力が弱まった今、ゲーデが人間の世界に現れる事になるかもしれぬ… 」



私達が恐怖を抱けばそれを強く感知してしまうのだから。負という概念に関して一番感受性が強い幼子に、その言葉は酷いんじゃないんだろうか。私はあの子の事を思い返すだけでこんなにも愛しいと感じてしまうのに。そんな事を吐き出せなくて、椅子から軽く降りる



「 浅葱、どうしたの? 」

「 ちょっと、頭冷やしながら散歩してくるよ 」

「 …そう。怪我をしないようにね 」

「 …リフィル、あのさ 」



科学部屋の扉の前で立ち止まって、少し俯いたまま



「 しばらく、あの子をほっといてあげてくれ。私も頭が冷えたらちゃんと話さないといけないし 」

「 ええ、それはいいけれど 」

「 だけど、目を離さないで。不安定な時、『人』は何をするかわからないから 」

「 貴女、今、 」

「 あの子は、エールなんだって。それだけのことだよ 」



エールという人間が、世界を救った。そうしたらそれはディセンダーという愛称がつくだけだ。英雄もまた同じで。世界を救うがどうとかじゃなくていいんだ。
世界を救うためだけに生まれただなんて、馬鹿馬鹿しいことはどうでもいい



( カノンノのお姉ちゃんになった日のことを思い出した )
( あの時勘違いしていたのか、正しかったのか )
( 世界樹の気持ちを確かめに歩き出す )

( 『よっぽど世界が好きなのか?世界樹ってヤツは』 )

11/0218




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