セルシウスをエクスプロード地獄に追いやるという弱点属性を何度も繰り返し、何度もルカと私が交互に時間を稼いだ結果。セルシウスは冷たい雪の上に膝をつき、黒いもやに押しつぶされそうにも見えるその姿にエールが近づいていく。手をゆっくりとかざし、優しい表情でセルシウスを見つめると白い光が彼女を包んでいく



「 私は… 」



視線、まつげ、顔と上がっていったその表情は今まで眠っていたかのような顔つきでぼんやりと視界を見つめた



「 セルシウス…!元に…戻ったのか…? 」

「 負に覆われ、己を失っていたか。我が力もまだ小さきものだな 」



自分で自身をあざ笑ったセルシウスにヴェイグが少し安心したように小さく笑うのが見えて、自分の腰に刀を戻し戦闘位置から距離をとる。こんな大事な時に後ろから敵が着たらそれこそ大問題だ。個人的にそれはよくない。此処はいいシーンなんだから、なんとしても守らねばならん



「 ヴェイグ! 」



そう意気込むと、凛とした綺麗な声が雪の上で跳ねた。
振り返れば金髪碧眼の美少女が、紅いドレスをきて紅いヒールで駆け寄ってきている。正直に言うとヴェイグが羨ましい。くそう、立場変わってくれないか!



「 クレア!大丈夫か…?どこも、悪くはないか!? 」

「 平気よ。それより、ヴェイグは? 」

「 ヴェイグさん、クレアさん… 」



控えめに出されたアニーの声に振り返った二人。あきれているというか何と言うべきなのかこのイチャつきぶりは見ていられないとばかりのしかめっ面をしたその姿に二人が目を合わせてからすぐにヴェイグが頭を下げた。



「 アニー…。すまない、迷惑をかけた… 」

「 いえ、気にしないで下さい。それより、これから避難したガレット村の皆さんと合流しないといけないですね 」



それからアニーは軽く身体の方向を変えて、そっと手先をエールへと向けた



「 エールの所属するギルドで、村人を保護してもらっています 」

「 まあ、そうなの? 」



ただでさえ煌びやかなオーラを放つ金髪碧眼の美少女は口元に手を当てて、驚いた後すぐに表情を緩めて嬉しそうにその青い目を細めた。カールしたまつげ、小さい顔、長い首、細いウエスト、形のいい足首。何処を見ても目の保養になるとはこういう事なんだろうか。いいなあ、ヴェイグの幼馴染いいなあ



「 みんなを助けてくれてありがとう。私は、クレア・ベネット 」

「 わたしは、エールだよ 」

「 それと、彼はヴェイグ・リュングベル。よろしくね 」

「 あっちにいるのがルカで、こっちにいるのがお姉ちゃんで、浅葱っていうの 」

「 エールに、素敵なお姉ちゃんがいるなんて羨ましいわ 」



自己紹介なんて後でいいんですよ、エール!なんて声は聞こえるはずもなく、目の合ってしまった青い目に微笑んで腰を曲げて挨拶をすると、クレアも同じことを考えていたようで同時に顔を上げた。その瞬間、セルシウスと目が合う



「 私は、セルシウス。この土地を負より守る氷の精霊だ 」



目が合っただけなのに、何かを知られているような罪悪感にそのまま目をそらした。手の中にじわりとでてきた汗なんか比にならないくらいに、



( 相手が精霊だから )
( そんな事を言っては笑われてしまうかもしれない )
( でも、そんな気がしてならないのはどうしてだろう )

11/0217.




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