「 あれは、ヴェイグさん…! 」



やっとの思いでたどり着いた氷の滝には水なんて流れる音はなく、透明な塊が滝を模っていた。偽造品じゃないのかって、プラスチックで出来ているようなその滝の真ん中。岩の出っ張りに青い髪の美女が立っていた。黒い霧を背負って仁王立ちをして、それでこちら側にいた水色の三つあみの青年を睨んでいる。



「 逃げるのはそこまでだ… 」



両手剣を片手で持っている力持ちな青年を見下したままの青い髪の女性。もっというなら腹出し。雪国で腹だしルックがはやっているんだろうか。お姉さんはちょっぴり複雑な気持ちになります。そう、あのスラッとしたお腹を見るたびに、お腹に力が入っちゃうくらい



「 さあ、クレアを元に戻してくれ。俺は…、おまえと戦いたくはない… 」



またクレアか。畜生、クレア大好きくんめ。クレアのピーチパイも大好きくんめ。そしてクレア…何度君は氷付けにされればいいんだい?リバースじゃ、ヴェイグに氷付けにされていたじゃないか!新しく凍り姫とかいう童話が出来そうだよ。そう思っていると美女が空中で一回転を決め、雪に拳をつきたてるように攻撃をしてくる。ヴェイグはそれを避けて、武器を構えなおした



「 そうか… 」



刃先を迷わずに美女に向けた青年。



「 なら力ずくででも、クレアを元に戻してもらう… 」



信念のこもった目でそう呟いた青年にアニーが目を泳がせる。ルカはルカで慌てていて、エールは首をかしげながらその場所を見て。たった一言小さな声で「負」と呟く。もうあの正体がわかっているなんて流石というか、普通にみると背中が焼け焦げているみたいで複雑な心境になる



「 待っていろ、クレア… 」

「 ヴェイグさん!やめてください!無茶です! 」

「 む…、無理じゃないかな…。相手は正気を失ってるっぽいし 」



遠くから止めにかかる声は青年、ヴェイグに届かない。
もうクレア一直線すぎて多分聞く耳がないんだと思う。こういうときにあの男がいれば熱く語って止めてくれるであろうに。くそう、何故いないんだ!



「 あ、で、でも、どうすれば… 」

「 ルカ、殺ってくる 」

「 そうだね、浅葱お姉ちゃん。やっちゃおう 」

「 ちょ、ちょっと待ってよ!浅葱は絶対違う意味だったよね! 」

「 気のせいだろう。それに止めなくてはいけない事は一緒だから問題はない 」



ルカの頭を軽く撫でて横を通り過ぎると後ろをついてくるエール。



「 え…?エール、浅葱。本当に、やるの!? 」

「 うん。わたしがやらなくても、お姉ちゃんは行っちゃうもん 」

「 …もう、大胆なんだね。無茶なのはイリアだけで十分なのに… 」



刀の柄をそっと握って腰から引き抜くと、後ろで武器を構える音が聞こえた。セルシウスの視線がヴェイグからこちらに映ると同時に後ろからルカのため息が響く



「 わかったよ。じゃあ、なんとかしてみよう 」



妥協のため息を聞いてから、雪を足で蹴る。
それは



( くるがいい…! )
( 浅葱、気をつけて! )
( てやあああああああああ!! )

11/0216.




- ナノ -