マオとユージーン。それと心優しい村人の皆様を送り届けてすぐに走ってこっちに向かおうとしたら赤い瞳と目が合って、空気の寒いとは違う感覚が背中を駆け巡ってゆっくりともう一度目を合わせようとしたら甲板から大きな雪の塊を投げつけられた。あの鬼この野郎ふざけやがって!なんて声に出そうかと思ったら次はスピアの輝きが見えたので逃げるように雪の上を走ってます!ブーツ加工しといてよかった!



「 っはあ、 」



スパイクのようなブーツの裏側のおかげで雪の上をこけたり滑らなくてすむけれど、なんというか重たい。走り距離もあんまり長くないのに足が重たく感じてしまう。でも、裸足で走れば何十人が踏み慣らした道で滑って木にでもぶつかりそうなのもなんとなく予想がついた



「 このすぐ先が氷の滝になります。普段、セルシウスがいる場所です 」



やっと、声が聞こえた。もうすぐだ。
もうすぐ追いつく。何度あの槍に怯えて森林のなかをショートカットに使った事か!



「 あの、アニーさんの仲間の話だと、今のセルシウスは負の影響でどうとかって… 」



怯えたような震えた声が聞こえて私は急いで駆け出す。足に力を入れて精一杯雪を蹴ると、後ろの方で跳ね上がった雪の塊が着地する音が聞こえた。



「 そ、それって、僕らも氷漬けにされるかもって、こと…とか? 」



遠くでアニーが俯くのが見える。ぼんやりだけど!顔のほうの肌色があんまり見えてないから多分になるけれど、俯いてる。きっと会話からして悲しい顔をしているのも想像はつく。だからこそ、私は必死に走って、息苦しくても止まらない



「 …氷の滝へはわたし一人で行きます。あなた達を巻き込むわけには行きません 」

「 ルカが行かないならわたしだけでもいく。アニーを一人にしたら危ないもん。お姉ちゃんは女の子を危険な目に合わせるやつは最低だっていってた 」

「 そ、そうですよ。一緒に行きます。それこそ、アニーさんを一人にするわけには… 」



色んな意味で立派に育って…。
一瞬だけ育成方法を間違えたような気がするけれどフェミニストだと思い込めば問題はない。女の子に優しい女の子。仲間意識みたいだけど、結構大事なんです



「 ちょっと、私を忘れないでくれ! 」

「 浅葱さん、 」

「 浅葱、おかえり 」

「 お姉ちゃん大丈夫? 」

「 一度死ぬかと思ったが大丈夫だ 」



主に鬼畜陰険眼鏡に殺されるかと思ったんですが、案外平気でした。一瞬だけ、一瞬だけ槍が飛んできただけでギリギリで避けられたし実害といえば髪の毛4本くらい。4本とも毛先が綺麗になった事くらいかな!



「 私も行く。アニーを一人になんてさせられないよ 」



それにしても息苦しい。
こんなにも長い全力疾走は久々すぎてつらいけれど、アニーが一人ぼっちで言ってしまうのは嫌だったから必死に走った。本当に久々すぎて、明日の筋肉痛が怖い



「 …感謝します。アドリビトムの皆さん 」



薄っすら涙を浮かべたアニーに私は笑った。よかった、間に合った。呼吸がぜーはーぜーはー音を立てるけれど間に合ったのならいい。努力が報われた瞬間って何でこんなにも嬉しいんだろう。

まあ、それでも、



( 浅葱?どうしたの )
( いや、赤い視線が… )
( え? )
( 大丈夫、何でもない )

11/0216.




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