「 マオ!ユージーン! 」

「 アニー、戻ってきたのか! 」



大きな雪だるまをつくろう計画で、雪玉をエールと私で転がしながらやっと来た先でアニーが何かを見つけて走っていく。私とエールは必死に転がしながらその人物二人に近づいていくと避難民らしき人達が彼ら二人の後ろに固まっていた。一応一礼すると向こうも気付いたようで私達に向かって目礼をし、周りを気にし始める



「 ディセンダー探しには他国のギルドを頼る事にしたんです。 」



アニーの言葉にこちらを気にした黒い豹のような人型。ガジュマと呼ばれる人種であり、彼の名前はユージーンだ。そして隣にいた紅い髪の少年が私達の雪玉を見て唖然としていた。まあ、張り切りすぎたのは私もそう思う



「 セルシウスの話を聞いてもらおうと思って戻ってきました 」

「 けど、そのセルシウスが… 」

「 何かあったの? 」



俯いた紅い髪の少年にアニーが少ししかめっつらになり、私達の表情も少し曇る。雪だるま製作の手もとまり、会話に耳を傾けようとすると避難民の後ろから怪我をした人が連れられてきて私はそれに近づく



「 急に様子がおかしくなって、クレアを氷漬けにしちゃったんだ。話もすっかり通じなくなっちゃってネ… 」



大丈夫、私がいなくても話は進む。
だから私が出来ることをしなくちゃならない。ほんの些細で小さなことを



「 ヴェイグはセルシウスを追って一人で行っちゃった。きっと、『氷の滝』じゃないかな 」

「 恐らく、セルシウスも負の影響を受けたのだろう 」



何処を怪我したんですか?と聞けば避難民の人達が道を怪我してくれて私は刀についているレンズの部分に触れながら回復の術式を思い浮かべる。ミントいわく回復には心が大事なのだと言っていたけれど、あの人の回復量を考えるとそれ以上の何かがありそうだ。



「 村も魔物が溢れ、もう人が住める場所ではなくなった 」

「 そんな… 」



アニーが弱弱しく視線を落とすと村人の一人が「アニーちゃんのせいじゃないのにねぇ」と優しい声で呟き頷く人達がでてくる。いい村なんだろうなあと思いながら、骨にヒビが入っていない人以外の怪我を回復していくと小さな子供がぼうっとした目で私を見てくるから、そっと頭を撫でてマフラーを掛けてあげた



「 とりあえずは、村人を避難させるのが先だ。今はその誘導中でな 」

「 あ、あの…、この先に、船があります。怪我人の手当ても出来ます。そこまで村人を連れて行けますか? 」

「 船?船だと…? 」



怪しむようなユージーンの声が聞こえていないのかマフラーが嬉しかったのか少年が笑みを浮かべてその母親らしき人が頭を下げてくれた。多分魔物に襲われたのも突然で防寒具をあまりもってきてないんだろうな。寒そうな人達も少なくはない



「 と、とにかくっ。避難場所があります。安全だし、僕らの仲間が待機しています 」

「 そうか、それは大いに助かるな。感謝する 」



ルカが微妙に焦った声を出したのはちょっと怖かったんだろう。豹に睨まれて動けなくなりそうな人間の心理みたいなものだから気持ちはわからなくはないのだけど



「 私達は、このままセルシウスの元へ行きます。後で合流しましょう 」

「 アニー、私は一度船の近くまで案内してからすぐに追いかけるよ! 」

「 わかりました 」

「 すまない。無事を祈るぞ 」



この二人だけでこの人数の村人を守るというのも難しい気がする。少なくとも私だったらそれは無理だし、女性や子供が襲われたらと考えるだけで鳥肌がたってしまって吐き気がした。いや、駄目だ。今はこんな事を考えて不安な気持ちにさせたらいけない。早く暖かいところへ案内してあげないと、



「 案内を頼む。名を聞いてもいいか? 」

「 はい。私は浅葱です 」

「 ユージーン・ガラルドだ 」

「 ボクは、マオ。よろしく♪ 」

「 うん。よろしく 」



柄のついたままの刀を持ったまま、歩き出した私はたまに後ろを確認すると一番後ろに経っていてくれるユージーンが頷いた。



「 魔物の気配がありましたらユージーンか私、マオに伝えてください。お願いします 」

「 おねえちゃんは、戦えるの? 」

「 うん。戦えるから、戦うの 」



私を見た少年の頭をもう一度撫でた。
不安そうな顔をさせないように、無事にバンエルティア号へと届けるために



( 浅葱!前から来たぞ )
( 皆さん固まってください、危険ですから )
( 任せてヨ!バーンストライク!! )

11/0216.




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