久々にエールと手をつないで歩いてみたけれど、なんだか不思議と心がウキウキする。横に並んで同じくらいの歩幅に設定して歩いてみるのも楽しい。もしかしたら、楽しいというか、嬉しいのかもしれない。嫌われてないことの再確認をして安心しているような子供と同じようで、私もまだまだ子供だって認識させられてしまう



「 結構寒いね… 」

「 他所から来た人にはそう感じるかもしれませんね 」



寒いけど、寒くない。隣を確認してみても私の編んだマフラーに鼻先までうずめて嬉しそうに笑っているエールをみると心がポカポカしてきて別にもう寒いとかどうでもよくなってきた!この場で抱きしめてしまいたいけれど、抱きしめるのにはこの手を解かなきゃいけないというのが憂鬱だ。くそう、何故だ!何故私には腕がもう少しないんだろうか!



「 厚着してきてよかった…。イリアみたいにお腹出してたらきっと風邪引いちゃう 」

「 ええ、きっと引いちゃうでしょうね 」



さらりと認めたアニーに私達の視線が集まる。貴女もお腹出てますよ、雪国のお嬢さん。だなんていうにも言える状況じゃなくて、エールと同じように鼻先までマフラーにうずめてそれをじろりと見る



「 …な、何ですか?何でわたしの方を見るんですか? 」

「 い、いや…。アニーは平気なのかなって思って… 」



ルカがそういうとアニーは瞬きをしてから、納得したような表情をした。あと1分気付かなかったら私は腹巻でも作って今度差し上げようかという安易な発想がアッサリと打ち崩された気がしてちょっとだけショックだ



「 わたしはここが地元ですから。慣れてます 」

「 慣れってすごいね… 」

「 慣れると寒くないの? 」

「 寒くない訳ではありませんが、大丈夫にはなりますよ 」



エールの質問にアニーがサラッと答えると「アニーはすごいんだね」とか言っていた。私とエールは寒いのに負けているのか心が温かいのかでルカほど寒い寒いという事がなくなってしまったので一番のさむがりがルカになっている。寒がり王、ルカ



「 そういえば、浅葱もエールもアニーも暖かそうなマフラーしてるけど、どうしたの? 」

「 お姉ちゃんの手作りなんだよ。いいでしょー? 」

「 え!浅葱、編み物できるんだ 」

「 心外だな畜生 」



途中から間違えたりしてパニールに何度か教えてもらったけれど3つ目作る頃にはかなり上達したつもりでいたのに。



「 いや、だって、パニールのイメージが強くて 」

「 気持ちはわかるけど、そこまで意外? 」

「 …う 」



よし、決めた。
今度ルカの背中にショッキングピンクのハートのワッペンを縫い付けよう



「 喰らえ、ばかーッ 」

「 うっわああああ 」

「 くそう、本場の雪球はこんなにも柔らかいのか! 」

「 やめてよ、浅葱! 」

「 そんな事をいわれてもやめない! 」



片手で作る雪玉は小さくて雪球ともいえないようなものになってしまうけれど、くやしくて投げつける。八つ当たりみたいなものだけれども、ちょっぴり悔しいけど、こんなにも女の子でいようと思っているのに!



「 編み物だって、楽しいんだぞ 」

「 編み物まで出来たら浅葱が何でも出来ちゃうよ 」

「 …いや、正直なところちょっと日用大工は苦手でして、 」

「 宝石加工とかも? 」

「 ちょっと、無理があるんです… 」



エールが進んでやってくれるからお姉ちゃん喜ぶべきなのか、切ない気持ちになるんですけどね。何でも出来るお姉ちゃんは、その所為で取り払われて大体なんでも出来るお姉ちゃんになってしまったのもついこの間だ。この間パニールに頼まれて包丁をつくっていたエールの目といえば思い返すだけでも本職じゃないかとおもうような顔つきだった気がする



「 まあ、出来る事だけやれればいいんですけどね 」

「 …出来る事だけって? 」

「 皆に美味しいご飯を届けること 」



帰ってきた皆の服の解れを直したり、お洗濯したり、怪我治したり。ご飯つくったり。些細な事でも皆と関われればそれで嬉しくて、楽しいから



( 幸せでやさしい事 )
( 嬉しくてためになって、 )
( 私の居場所になる、あたたかい大事 )

11/0216.




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