降りた先のガレット森林区は真っ白で、木は雪をかぶっていてすこし着膨れしているみたいで自分の事かと思って思わずお腹を叩いてしまった。ルカに見られたような気がするけれど、気のせいという事にしようと思う。気にしてしまったらもうなんだか女として生きていけないというか、まだ女でいたいというか。例え変態といわれる日が来ても私は、お姉ちゃんと呼ばれたい



「 そういえば、ガレット村って何か特殊な事とかあるの? 」

「 え? 」

「 ほら、精霊と暮らしているなら、そういう文化とかもあるのかなあって 」



精霊と人が共存するなんていいことだと思う。そういうつもりで聞いたはずだったのに目を真ん丸く開いてパチパチと瞬きをしたアニーに私は続きの言葉がいえなくて、口を閉じると



「 文化というかガレット村には、世界の人々から生まれる『負の想念』を精霊の力を借りて、世界樹へ送り込むという儀式があります 」

「 儀式… 」

「 はい。その儀式を『穢れ流し』と呼びます 」



穢れ流し。人間から生まれた負を、世界樹の中へと送り込んでしまうその儀式でゲーデが何度も苦しんで何度も怒って世界樹の中で変えられてしまうその行為。生き物は助かって、それ以外のモノは同じ道を辿りまた負が生まれるループ



「 でも、ここ最近『負の想念』が増加し、うまく世界樹へ送り込む事が出来なくなってきています 」



世界樹が受け止めきれなくなったその負は



「 セルシウスは、世界樹に異変が起きていると言いました 」



世界中に広がって



「 そしてこれを解決する為に、やがてディセンダーが現れるだろうと… 」



私たちに帰ってきてしまった。繰り返されているだけなのに、私達はそれを受け止めきれずに植物へと影響し、思考へと響き、負が悪となってしまう。生活をしていれば負は生まれる。どんな善人にだってあることなのに、それがたった一人へと向けられてしまった



「 それで、ディセンダーを探しに出たんだ… 」

「 はい。この事態を解決するのはディセンダーだけであると… 」



希望は姉へ、絶望は弟へ。
変な役割分担のまま彼らへとあの子達へと集まる。



「 それにしても、『負』の存在を認知して、しかもそれを処理するという習慣が行われていただなんて、意外だね 」

「 ガレット村の風習は、あまり知られていないんですね。村自体、他所と交流が少ないですし 」



雪の音を響かせながら歩く道に、一人分の足音が足りなくて振り返るとエールが真上から降ってくる雪を見て手袋のなかに落ちるのを待って、ゆっくりとゆらゆらひらひらとやってくる白を、ぼうっと見つめる



「 空気はどんよりしてるのに、雪は白くて冷たいね 」

「 うん、そうだね 」

「 白くて冷たくて、すぐに消えちゃうから氷なのかなあ? 」

「 削った氷、のほうがあってるかもしれないけど… 」

「 じゃあ、雲の上から誰からカキ氷機で削ってるの? 」

「 ……そうかもしれないねぇ 」



ガリゴリと削っていたらなんてシュールなのか。
考えながらほくそ笑みながらエールに手を差し出すと、首をかしげた



「 寒いから手をつなごうか? 」

「 …うん! 」




( 君は私が守るからね )
( だから、お姉ちゃんを頼ってくれると嬉しいな )
( そうしたら、私は何も怖くないから )

11/0216.




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