「 〜♪ 」



雪の振る甲板には誰もいないと思って、対雪用に加工したブーツ(ちょっとだけスパイクチックな裏側)で甲板の雪を踏み潰して、破壊しながら雪の歌や少し静かな歌を口ずさんだり、鼻歌で歌ったり。それはいつかの、私の世界での現実を夢見たような。色んな場所で流れていた一部の曲を拾ったような音程でゆっくりと雪の上に響かせる



「 素敵な歌ですね 」

「 あ、ああああああああああああ、あに、アニーですきゃ 」



あ、やばい。焦りすぎて変なところで噛んじゃった。くそう、さすがノープランだ。何も考えてなさすぎて頭の回転もついてこない。雪降ってるし甲板にでる馬鹿なんて私くらいだろうという発想が浅はかだったんだろうか。しかも、マフラーもしてないよこの子!



「 はい。ホールのほうまで歌が響いてたのでずっと歌っていたんですよね?寒くありませんか? 」

「 私個人としては貴女のおなかのほうが心配です 」

「 え? 」

「 いや、寒くないよ。大丈夫。ありがとう 」



私だったらそんなにお腹だしてたらそっこうでお手洗いに飛び込む事になるんだろう。へそだしルック以上に腹だしアニーを見て心底そう思うのは私だけなんだろうか。雪国娘のスペックが知りたくなる



「 そういえば、あの依頼をエールが請けてくれることになったんです 」

「 そうなんだ。じゃあ、また人一倍頑張らないとね 」

「 どういうことですか? 」

「 血は繋がってないけれど、私はあの子のお姉ちゃんなの 」

「 お姉ちゃん、って姉って意味の? 」

「 そうだよ 」



別にオカマとかそっちの類じゃないので安心してください。
私はいたってノーマルです。ノーマルと書いて何処にでもいる女です。



「 だから、守ってあげたいんだ 」



こういうと皆は私に言うんだ。それは甘やかしているんじゃないのかって。その甘いがあの子に優しさとして伝わっている事は、皆知らないだけで。ちゃんと成長していることを知っているから私は『甘い』を認めて笑っていられる。あの子が正しい道を、自分だけの道を歩き始めているのが、わかったら



「 おねえちゃーん! 」

「 …なあに? 」

「 見て!ほら、パニールがね、浅葱お姉ちゃんにポンチョ作ってくれたんだよ! 」

「 本当?じゃあ、このコートはエールが着ていいよ。そっちのポンチョ着るから 」

「 いいの? 」

「 うん 」



ポンチョにしては長いものをうけとりながら下に着ていたカーディガンを着たままカーディガンが見えないくらいのポンチョを着る。多分考え事をしながら作ってくれていたのかなあ。動きやすいから気にはしないけれど



「 首が寒いでしょう?マフラー巻いてあげるからこっちにおいで 」

「 うん! 」

「 アニーも私の作ったマフラーをあげよう 」

「 え?いいんですか 」

「 白い毛糸のやつでいいかな?白が余ってたから勢いで作っちゃったんだけど 」



先に近くにいたアニーに白いマフラーを巻きつけて、次にエールへと巻きつける。二人が嬉しそうに笑うのを見てから私は安心したようにポンチョをかぶって、刀がとりやすいかを確認しようと手を添えてみたけれど結構大丈夫そうだ。パニールはここまで考えて作ってしまうんだとしたらプロだプロ。



「 あったかいですね… 」

「 おねえちゃんのにおいがするよ! 」

「 …私の? 」



きっと変態臭だろう。
純粋な子ほどそういうのを危険視できる能力があると昔どこかできいたことがある。その可能性が一番高くて、なんとなく知られたくはない感じがするにおいだ



「 太陽みたいにあったかくて、洗濯物の匂いとなんだか落ち着く大好きな匂いがするの 」

「 あ、わかります 」

「 うーん、毎日触ってると洗濯物の匂いが染み付くのか…? 」



家事は主に当番だけど、毎日やっているのは青い海を見ながら干すのが習慣になってついついやっていただけなんだけど、落ち着く匂いってなんだろう?



「 優しい香りがしますよね 」

「 うん。浅葱お姉ちゃんの、あったかい匂いだよ 」



なんだろう、ちょっと恥ずかしくなってきた。嬉しいような痒いような、うわあああ心がむずむずする!くそう、これだから美少女が二人そろうって卑怯なんだ!くそ、可愛すぎる!かわいすぎるんだよおおおおお!!



( 特にこれといったにおいはない )
( なんだ無臭か… )
( じゃあ、何を二人はかいでるんだ!私が気付かないだけなのか! )

11/0216.




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