一通り自己紹介を終えたところで、一息ついた。のんびりしていたせいか、すっかりというかうっかりしていたが余った布団挟みを腕に掛けっぱなしだった。掛けっぱなしというか肩に装着してしまっていて変な事になっている。左肩がいかつい。なんだか後ろからのシルエットを考えるだけでアンテナつきの携帯電話みたいなんだろうと思うだけで外しにくい



「 それでアニーさんは、ガレット村から来たのですか? 」



場所を重要視するチャットこと子供船長の目は輝いていた。よっぽど嬉しいのかもしれない。この目はこの間コングマンがまた勝った時だか、何連勝だかの話をしてくれた時と同じ時の目をしていてキラキラと輝く青い目が私には眩しいです、船長



「 そんな遠い所から依頼だなんて!このアドリビトムの名前も有名になったものですね 」

「 いえ、わたしはただ、そうするように言われただけですから… 」

「 ふうん…、でもまあ、そういった人はボクらを知ってたって事ですね。それで十分です! 」



テンションの高いチャットに若干押されぎみのアニーを見ながら私は機関室の端でぼんやりと声だけを聞き取っているけれど、なんだか妙にチャットが嬉しそうな姿を見る限りガレットってそんなに遠いらしい。画面前でしか見たことないからよくわからないや。でも、バンエルティア号だと案外どこでも行けるから、遠いとか近いとかわからないんだけど



「 さて、では依頼についてお話しください 」

「 あの…、 」



言いにくそうに視線をそらしたアニーにチャットがまた首をかしげる。



「 ディセンダーを探して欲しいんです 」

「 は!? 」



チャットの驚いた声にアニーの目が伏せられる。いや、目の前でそこまで驚かれたら誰だって目を伏せたくなるのはわかるけれども、チャットもチャットで驚きすぎだよ。まるで怪談話の化け物が本当に存在しているのを聞いたかのように驚かなくたって何事も可能性的な問題があるんですよ、船長



「 ディセンダー…、って、あの。おとぎ話の勇者ですか! 」



先に言っておくぞ、チャット。
お前や私が乗っている船だってこっちの世界じゃおとぎ話の一部というか、おとぎ話の船だろうが。おとぎ話の勇者と対して変わりはしないでしょうが!勝手に決め付けちゃいけません!めっ!



「 ご冗談を。あれは、ただのお話でしょうに。こちらではお役に立てませんよ 」

「 でも、ガレットに住まう精霊が、ディセンダーの出現を察知していました 」



そしてこの世界の話がゲームだとは誰も思いはしないのと同じで、おとぎ話が本当だっておかしくはない。白雪姫だってリンゴ詰まらせちゃことだってあるかもしれないし、妖精だっていろんな国での出没は見られているし、小さなおじさんだってその部類だ。見たことある。がおとぎ話になるのだって普通だと思います!



「 それで、そのディセンダーを連れてくるように命じられたんです 」



ディセンダー。世界の救世主。
無垢で知りたいことだらけの私の大切な、妹



「 精霊と生きる村があるなんて。その話、興味があるわ。ディセンダーについてもね 」

「 リフィル、 」

「 ディセンダーを探す前にまず、詳しい情報が必要よ 」



考え込んでしまう前に聞こえた声に、顔を上げるとリフィルが生き生きとした表情でチャットやアニーに提案をしている。ある意味頭の回転が速いと言うべきか、多分リフィルにとっての普通をしているだけなんだろうけれども、精霊とかディセンダーとか聞いたら天才科学者は目を輝かせたんだろうなあ



「 こうしてはどうかしら?ガレットに住む精霊に直接話を聞くのよ 」



精霊って言葉だけに大きく反応しているように聞こえるのは気のせいであって欲しいとは思う。でも年代ものというか、アンティークとか珍しいもの大好きだから、何とも言いきれないけれど。先生の楽しみだから、まあ…そうなったら精霊さんに犠牲になってもらおう。尊い犠牲は人生につき物だ



「 それから、その情報を元にディセンダーを探すの 」

「 なるほど。それなら依頼として受け付けられます 」



そうしてやっと、安心した表情でアニーが笑う。



「 そうですね。それでは、私がガレットまでご案内します 」

「 じゃあ、あの案内班に加わるよ。準備してくる 」

「 え?浅葱さん、いいんですか? 」

「 今日はまだギルドの仕事してないんだよ 」



それにクレアが見たいとかアニーが一人で行かせられないとか、ルカだとちょっと精神論のほうがビシっとしないとか色々と理由はあるけれど。やっぱり、自分の妹と交流を深めるチャンスだし、まだ姉離れだけはして欲しくない。まだ、私の心の準備が出来てないので本当にごめんなさい、下心満載です。

だって、



( それに相手は雪だ )
( こけてしまったら、泣くかもしれない )
( だから、私は念のために絆創膏も準備します )

11/0212.




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