やっと夜になってから、最後というか最後ですむのかわからないけれどユーリのデザートを作っている。それも全力だ。彼が甘いものがすきなのは元々知っている情報だった訳なのだから何と言うか手を抜いてはいけないという気持ちを背負ったまま必死に30cmもあるパフェを作ってみたけれど運ぶのも一苦労でユーリの前に置いたときにはスプーンを刺すことを戸惑うほどだ



「 …おお 」

「 なんで若干引き気味なんだ。失礼だぞ 」

「 いや、本気でやるとは思ってなかったんだよ 」

「 …ま、まさかあのときの約束は嘘だったというの!?ひ、酷いわ!酷いわ、ユーリ…私がどれだけユーリのこと考えて砂糖と戦った事か 」

「 うまい 」

「 スルー!? 」



ぐすん、とエプロンの端を持って泣きまねをしてみたけれど軽くスルーされてしまった。彼はどうやらパフェに魅了されたようだ。この戦闘大好き兄貴がこんなにもおいしそうにパフェを食べる事を誰が知っているんだろう。私の予想では多分パニールが一番知っている。



「 生クリーム多いとか言わないねえ 」

「 え?普通だろ? 」

「 はっ…将来糖尿病だな 」

「 そうなったらお前の所為だ 」

「 そうやって脅したって私の気持ちは揺るがない!砂糖は使い続ける! 」



果物をふんだんに使い挙句に生クリームたっぷり、ウエハースやらチョコレートソースやらで胃に来るはずのパフェを黙々と食べて食べて食べ続けるユーリ。こいつおかしいんじゃね?とか思い始めた私は通常のはずだ。けして変態などではなく、普通の人だと主張させて欲しい。変態って普通だと思う



「 食うか? 」

「 ううん。食べない。もたれる 」

「 自分で作ったくせにな 」

「 食べたいって言われたら、頑張らなきゃ失礼だと思っただけ 」



黙々と食べ進めるユーリはさっきご飯も食べたはずなのによく食べる。そのくせ細いときたこのスタイルの良さはどうなんだと思うけれどたまに廊下を歩いていると呼ばれて私を背中に乗せて腕立てをしてしまうあたり、ある意味消費が激しい気がする



「 そういや、浅葱。薬飲んでから調子はいいのか? 」

「 まあ、いつも悪くないよ。ただアレがくるのがちょっと伸びるだけ 」

「 ふうん 」

「 心配、してくれてるの? 」

「 そりゃ、当たり前だろ 」



言い切ったよこの人。いや、別に良いんだけどね。言い切ること自体悪い事じゃないし、それでもなんだかちょっと照れる。パフェ食べてるのにイケメン。頬にクリームついてて可愛いけど言い切ったよ。くそう、なんか本当に照れるなあ



「 オレはさ 」

「 うん 」

「 浅葱に消えて欲しくねぇんだよ 」

「 …う、ん 」



パフェを食べる手を止めて私の頭に手を伸ばす



「 だから、 」

「 ユーリ 」

「 お前が消えたくないって言ったら、方法を探すつもりだった 」

「 …ごめん 」



頭を撫でる手が私の言葉で止まった。笑って消えたくないって言えばいいんだろうかなんて酷いことを考えてしまうくらい心が追い込まれていたみたいで、何もいえなくてまた泣きそうになるのをこらえて、下唇を噛むとユーリが優しい顔で私の頭をまた撫でる



「 ごめんね 」

「 何度も謝んなよ、 」

「 ごめ、なさい 」



そんな気持ちにさせて、ごめんなさい。初めて会ったときからユーリは私の消える姿を見ていたんだからそんなことを考えていたっておかしくはなかったのに。どうして今まで気付かずに、たまに笑っている姿が様子を伺っていたようにも見えなかったのは、どうしてなんだろう



「 ユーリがそんな思いしてたなんて、思ってなかった 」

「 …、浅葱 」

「 もう、気にしなくったって、いいんだからね。ユーリが私のことを思う必要なんてないんだよ。もうそう思ってくれたって気持ちだけで、ほん、とに 」



なんで笑わなきゃいけないのに、なんでなんで目頭がこんなにも熱くて視界が歪んでみるのかなあ



「 あり、がとう、ユーリ 」



いつもみたいに笑う予定だったのにユーリの目には泣き笑いした意地っ張りが映っていて。それが見えてから私は、すぐにユーリにパフェを食べさせられた。砂糖を沢山入れたから甘いのに、物凄く甘いのに
なんでかな、



( 泣くと疲れるから甘いもんでも食べろって )
( 自分で作っておいて言うのは変かもしれないけれど )
( 本当に、あまったるいや )

11/0211.




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