「 どれだけ私たちが心配したかわかっているんですよね? 」
「 はい、申し訳ございませんでした 」
朝と言ってももう洗濯物を干し終わった頃にジェイドに呼び出されまた甲板で正座をさせられてしまったんだけれども、もうなんというかどうしてくれようかという表情でジェイドは笑っているし、私はさっきから『はい』と『申し訳ございませんでした』しか喋ってないからもう本当に責められているのか虐めを受けているのかわからないんだけどなあ!もうやめてくれないかなあ!
「 あと少しで全員捜索に出るところだったんですよ 」
「 ご迷惑をかけて、申し訳ございませんでした 」
「 その程度で許されると思ったら大間違いです 」
「 はい、申し訳ございません 」
ジェイドが生き生きしてるのは気のせいだろうか。いや、洗濯物はちょっとしか干してないのにパニールがもう食堂にパタパタと向かってしまったし、私も早くゼロスの朝ごはんとやらを作ってあげなきゃいけないんだよね!今日の食堂メニューはA定食とB定食とCの自由があるよ!だけど、最近裏メニューの存在を黙認しました!気になる
「 …浅葱、せめて夜中に出掛ける時は起きてる人に声をかけていきなさい 」
「 …う、 」
「 それか書き置きでも構いませんから 」
「 いや、えっと、 」
書置きとか字が書けないのでちょっと無理です。だとしても誰かに夜中散歩してくるね!と声をかけたら確実に不審な目で見られて挙句になんともいえない表情でなにか聞かれるんだろう。うーん、聞かれたくない
「 私に言ってくれても構いませんから 」
「 え? 」
「 ただし、砂浜程度でとどめてくださいね。昼の散歩はともかく夜の散歩はそこまでです 」
「 いいの? 」
「 流石に朝方の5時は困りますが、ある程度は職務がありますのでおきてますよ 」
それって本気で言ってくれてるんですかジェイドさん。いやでも、過保護領域がしっかり作られているというのは複雑な感じがするけれど完全に禁止じゃないというのが優しいところだ。さすがというか、なんというか。ジェイドはジェイドだったなあって思う
完全に許す訳じゃないって言うところが、ジェイドらしい
「 それに貴女がもうあの言葉を言って何十日も立ちますけれど、本当に後悔はしてないみたいですしね。今さら完全に止めるのは無理だとわかっていますよ 」
「 諦められちゃってるなあ 」
「 まあ、あきらめていますが諦めてないので一応制限したんです 」
「 お優しいことで 」
「 貴女は甘ったるいだけですけどねえ 」
「 優しくはなれないんですー 」
いつもの会話。まるで昨日の事がなかったみたいな会話。それでもただ、甲板で正座して、ジェイドの話を聞いてゆるく約束をしているだけだとしても。いつもの会話であって、いつもよりほんの少しだけ優しいジェイドとの話し合いだから、暴言の準備は必要なかった。ただの皮肉と心配の掛け合いで
「 そういえば、ジェイドって国籍とか調べてるの? 」
「 ずいぶんと唐突ですが、それがどうかしましたか? 」
「 そうだとしたら随分前から私を怪しんでいてもおかしくはないかなあって思ったんだけど 」
「 怪しんではいましたけど、『嘘は本当にできる』等といわれてしまっては下手に追求が出来ませんから 」
「 それは、本当にされたら追求ができなくなるから? 」
「 ええ、それもありますが 」
嘘を本当にされてしまったらそれは紛れもなく本当で。追及の手が迫れなかったのもそういう事らしい。だったら、なんでそんなに歯切れが悪そうなんだ?
「 貴女の傍にはいつも、エールがいましたから 」
「 …エール? 」
「 いつも純粋なエールが貴女の傍にいたら、責めるにも責められないでしょう? 」
「 …ああ、まあ…気持ちはわかるけど 」
あの子が傍にいるとなんだかほのぼのしちゃって悪い感情なんて下心ぐらいだ。いや、これがたぶん物凄く悪い感情なのかもしれないけれども、愛だ愛。こればっかりはしょうがない。
「 それに、貴女は始めから悪になろうとしてなりきれてませんからね 」
「 …うーん、向いてないのかなあ? 」
「 あまりに偽善すぎるんじゃありませんか? 」
「 でも、自己満足で手を貸してるだけだし、それに此処にいる人達は私程度の悪なんて関係ないって顔するんだもの 」
「 このギルドは善良の集まりみたいなところがありますからねぇ 」
ジェイドはそう言ってホールの入り口を見た。ほんの少しだけ優しい表情で入り口を見ているから、今日は槍でも振るんじゃないのかと呟いたら頭の上に大きな手が置かれた
中途半端で宙ぶらりん( いたたたたたたたたっ!ごめん冗談だから!つぶさないでええええ! )
( 冗談にしては、過ぎた冗談ですねぇ )
( はっ!足を踏もうなんざ、甘い考えは捨てる事だな!残念ながら痺れてない! )
( いえ、体重かけるだけですから )
( 本当にごめんなさい!!! )
11/0211.
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