「 お姉ちゃん、 」
「 んー? 」
「 何で時間ってあるの? 」
そりゃまた唐突な。思わずそう出そうなのをこらえてエールを見ると爛々とした目で私を見てさぞかし、自分の納得できるような言葉が帰ってくるんだろうと表情がそう伝えてくる。まあ、誰もがぶち当たる疑問の一つというか、しょうがないというか、なんとも答えずらい言葉に息を呑むと、そっとカップが目の前に出てきて
「 飲むだろ? 」
「 …ありがとう、ユーリ 」
「 あ!ユーリだ!ねえねえ、ユーリ!ユーリはなんで時間ってあると思う? 」
何でそんなに仲良さそうなんだお前えええええええ!ずるい。うらやましい。私には積極的に話しかけてくれるけれどそんな親しさを見たことがない。どうしよう、ユーリに負けてるかもしれないという気持ちになってきた。エール…、ついにお姉ちゃんには飽きたんですか?
「 何でそう思うんだ? 」
「 なんでって、だって、もーっと時間があれば浅葱お姉ちゃんともぉーっと一緒にいれるんだよ?嬉しくて楽しいんだよ? 」
「 そういわれてもなあ…オレは、そんな長時間一緒にいた事ねえから、わかんねーけど 」
「 こっち見んな 」
じろり、とむけられたユーリの視線に思わず返した言葉にコーヒーカップが持ち上げられる。ああ!私のコーヒー!私の飲み物返せ!
「 そういう態度はないだろ? 」
「 …あまりこちらを見つめられると血行がよくなります 」
「 素直に照れるって言えって、ほらよ 」
「 ありがとう 」
やった。やっと休憩が出来る!そう思うとどんどん頬が緩んで思わずデレッとした表情でユーリにお礼を言ってしまったような気がするけれど気のせいだろう。もしかしたら木の妖精かもしれない。頭の中に住み着いてしまってそういう悪戯をしている可能性もあるぞ…!妖精さんはいたずらっ子だからね!
「 で、浅葱とずっと一緒にいたらねえ… 」
「 ね、ね?ユーリも楽しいと思うでしょ?でしょ?ね、ね! 」
「 …楽しいですむかはまあ置いといて嬉しいかも知れねぇな 」
「 私は時間はこのままで良いと思うなあ 」
ずっと時間配分はこのままで良い。今ある事に関しての価値観が薄れてしまいそう出し、自分の傍に誰かがいる事を時間が長くなった所為で当然だと思うようになってしまえばそれは慢心に繋がってしまうような気がする
「 なんで? 」
「 何でユーリが聞いてくるんだよ 」
「 まあいいから、言ってみろって 」
「 うん、まあ…そもそも時間って言うのは太陽とこの世界グラニデっていう世界、宇宙から見れば星と関係しているんだよ 」
地球と同じ事で、季節が巡るのと一緒で
「 星は回転するから朝と夜が上手くくるように出来ているんだよ。反面夜になって反面朝になる。その間が昼 」
「 …うん? 」
「 グラニデって世界もおはようとおやすみの時間があるって事だよ。で、おやすみの時間は夜だから真っ暗でしょう? 」
「 確かにそうだな… 」
「 夜だとご飯とかの材料は取れないし、作物が育てることができないから、時間を作ってこの時間までにあれができるように。この時間までにこれが終わるようにってやったんだよ 」
そうやって時間が習慣になってしまったのは私達で。今さら時間が長くなっても身体がまずついていかない気がする。一日の配分はそうやって決められているし、今生きている人達の身体のエネルギーはそうやってその時間中持続できるようにできているんじゃないのかなあ
「 それに、時間が沢山になってしまったら、生きている間の思い出がどんどん薄れていきそうで嫌なんだよね 」
「 薄れる?どういうこと? 」
「 そんなに長い時間生きていると、人の脳は覚えていられなくなるの 」
コーヒーを飲みながらそういうとエールが目を大きく見開いて物語の続きをせがむ子供のように前のめりになって私の方をじいっと見てくる
「 楽しい事も悲しい事も、忘れてしまうんだよ 」
時間が例えどれだけあっても私達がついていかない。
人には永遠などないのだと誰かが言っていたのは、きっとこういう意味だったのかと思うと少しだけ、ほんの少しだけ永遠を夢見たくなる。
終わりがある未来の先で( 誰かが笑っていられれば )
( それはどれだけ幸せで )
( 幸福な思いになれるのかを知りたいの )
11/0210.
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