ジャニスの話を一通り聞き終わったリフィルはため息をついた。話の内容といえばラルヴァを配布した村の話、動物の暴走の主な行動。植物の変化、いや進化形態の話だったのだけれど私としてはドラゴン○エストにでてくる魔物を思い浮かべて、相槌を打っていた。カラフルな鳥とか襲い掛かってきたときは流石にシュールすぎてコントローラーを持ってられなかったなあ…懐かしいや



「 そう…。もう、そんなに世界樹の傷の影響があらわれているの… 」



アンニュイな表情のリフィルを横にエールが心配そうな表情で話を聞いていて。あの子は優しすぎるから話に聞いた村や今のリフィルの心境が心配なんだとは思う。あとでそのエールに悪徳商法並みの甘い言葉をかけるのは私の役目なんだけどね。そう思って振り返ると科学部屋の扉がスーッと開き、紅い髪を揺らしたアッシュが剣を持ち私の横を通り過ぎようとする。



「 ジャニスと言ったな。おまえが、あのジャニス・カーンか 」

「 へっ? 」

「 アッシュ、やめなさい 」

「 黙れ!で、どうなんだ 」



私はアッシュの手首をつかんだまま聞くと鬱陶しそうに振り払おうとして腕を上げた。それに私は一本背負いの体制でなんとか耐えてみたけれど、お前ふざけんなよ!いくら準備万端だからってそこまであらぶられるともう腕だるいんですけど!仕事より辛いよ!?



「 イ、イエス。私がその…、ジャニス、だが……ひっ! 」



引きつる声。
静かにむけられたアッシュの刃先にジャニスの表情が強張り、私は嘘の準備を静かに始める



「 ラルヴァの開発の次は、世界樹に手をつけるとはな 」

「 アッシュ、 」

「 覚悟しろ! 」

「 アッシュ、それ以上近づいたら私が張っておいたワイヤーが君を切り刻む事になるけれど 」

「 …ワイヤー、だと? 」

「 ちなみにそのワイヤー切る事は可能だけど切ったら現在実験中の毒薬やらなにやら君に襲い掛かる仕組みになっているんだけど。そんなことをしたら君こそ無害の人間を傷つける。あるいは命すら奪ってしまうかもね 」



あらゆるところに巻きつけたから努力と労力だけが妙に磨り減ってしまったけれど、なかなか良い出来だとは思う。ちなみにテーブルの向こうにはやってないのであしからず。張ってしまったらエールが一番最初に崩しにかかるのは読めている。それに実際にそれに触れられたくはないので私はアッシュ身体等での間に腕を突っ込みそのまま羽交い絞めにしようと腕を曲げた



「 おや、お加減よろしいようで 」

「 離せ!こいつを殺す! 」

「 それは性急過ぎる判断ですね。ラルヴァを生み出した優秀な頭脳の持ち主ですよ? 」



さぞかし楽しそうに笑みを作ったジェイドとは対照的に暴れるアッシュ。このまま地面に寝せたら駄々こねる子供みたいになってアッシュの面目丸つぶれ作戦とか考えたけれどあまりに悪質すぎたので諦めて、背中に軸足と逆の足の膝を背の中央あたりに押し付けました



「 そう簡単に潰してもらっては世界にとってもよろしくない。そう思いませんか? 」

「 邪魔をするな! 」



暴れるアッシュは気付いていないだろうがだんだん後ろに曲がっていっている事にジェイドは気付いたらしく笑みを浮かべている。



「 あなたはこの世界を思う為に彼を消そうと思った 」



アッシュは良いやつだって事は分かってる。この世界に住む人は優しいからこそ、優しすぎるやつだからこそ、何かのために誰かを殺したりしてしまうことを。知っているからこそ、私はアッシュにジャニスを殺してほしくない。っていうか、むしろパニールのしあわせを奪わせてたまるものか!



「 しかし、今後必要なのは彼の知恵かもしれませんよ? 」

「 な…、なんだと… 」

「 アッシュ、共に行動しませんか?あなたにとっても、その方が都合いいでしょう 」

「 そうだよ、アッシュ。このまま私にブリッチ決められるのも嫌でしょ? 」



片や誘い、片や脅迫という状況にアッシュがどう返事するかと思ったら剣をしまって私の腕を外して通常の姿勢に戻った。かと思えば膝が痛かったのか背中を少し撫でているところを見る限り、なんだか可愛げがある。さすがアッシュ。



「 ここから去れ…。すぐにだ!! 」



捨て台詞を吐いたアッシュは私の片足を上げたまま微妙に反っているポーズを見て、複雑な表情をして出て行った。笑うなら笑ってくれ!ボケが上手くいかなかった芸人みたいでちょっとやだこれ!



「 引き続き、鉱山で研究を続ける。これだけ被害を出して、何もしないわけにはいかん 」



そして私の丹精込めた罠の前で立ち止まったジャニスは困惑した表情で張ってあるもの、に指を伸ばして触れるか触れないかの位置で止まった。



「 ところでこれは、どうしたらいいんだろうか 」

「 あ、ただのゴム紐なんで問題ないよ。今すぐに取り外すからちょっと待っててね 」

「 そ、そうか…。ワイヤーではないのか 」

「 触れ焦る前に、考えさせる前に吹き込んだからそう思うのも当たり前だね。ごめん 」



ゴムひもを外して、通り過ぎたジャニスが振り返る。



「 諸君、重ねて言う。本当にベリー・ベリーすまん 」

「 また新情報あったらよろしくねー 」

「 ばいばーい 」

「 気をつけて帰れよー 」

「 ちょっと、浅葱、エール。彼は遊びに来たわけではないのよ? 」

「「 えー 」」



だけど私の背後では彼は入ってきたパニールにときめいているのも予想済みだ。いいんだ。パニールが幸せになってくれるなら私は問題ないんだ。その時間稼ぎのような会話でもエールが嬉しそうに笑っていた。さっきまで悲しげな顔してたのに一転したなあ



( オゥ……… )
( あの、なにか…? )
( ソー・プリティ… )

( ジャニス、伝わってないからそれ )
( ワット!? )

11/0209.




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