「 ただいま〜 」

「 おかえりー 」



手元ですずちゃんと真剣に囲碁をしながら顔をあげるとショッキングピンクがいて、今帰ったんだな。と適当におかえりと言っていたらすずちゃんがジャラジャラと私の黒い布石をとっていく。え?ちょ、マジで?そんなに!?今の一手でそこまで責められてたっけ?あ、完全に包囲されてた、だと…!?



「 あ、ハロルド!何かわかった事、あった? 」

「 んー、世界樹の根からまだわずかに噴出してた。あれは『負』ね 」

「 え?負? 」



隣で囲碁を見ていたジーニアス、ハロルドと続いたのに私が思わず首をかしげるとハロルドが頷き、私の布石だったもの。もとい死活(石の生き死にのこと)をとり終わったすずちゃんは大人しく次の私の攻めを待つ。私は石を握って、そっと指すとすずちゃんが腕を組んで次の攻めとして、定石を置く



「 あの時、負の測定器のメーターが大きく反応したのは、別に故障したわけじゃなかったんだわ 」

「 『負』ですって?なぜ、マナを生み出す世界樹から負が噴出されているの? 」

「 さぁ?それはこれから調べないとね 」



まずい。非常にまずい事になった。
すずちゃん頭の回転が速いいい子だとは思っていたけれど、まさか此処までとは誰が思っただろう。私の布石ほとんど残ってないんですけど、攻めもできないんですけど、これってどういうことですか!私が極端に弱いだけなんですかね!



「 で、問題なのは傷ついた根の部分がどんどん弱っていってるって事。回復は難しそうね 」

「 つまりそれって… 」



隣で囲碁を見ていたジーニアスの口が閉じられた。自分で閉じたんだろう。この子も賢い子だからハロルドの言葉の意味を先読みする事だって可能だろうなんだとは思います。なんせ、すずちゃんの前に私と囲碁やったのはこの子だからね!ギリギリで勝ったよ!



「 当たり前だけど、マナの生産量は更に低下。で、これが原因で、このまま世界樹が弱ってく一方のまま枯れちゃうとしたら… 」

「 みんな、生きていけなくなっちゃうって事… 」

「 そーゆーコト 」



ハロルド、ジーニアス、ハロルド。別名ハロルドサンドと続くたびに、一手指し、また指す。話のテンポにあわせるように白石の模様が出来上がり、私は碁笥(碁石を入れる器)に手を入れるのを戸惑う



「 ど、どうすればいいのさ〜! 」

「 本当に、どうしようかねえ… 」

「 浅葱!囲碁なんてやってる場合じゃないよ!? 」

「 おま、囲碁馬鹿にすんなよ! 」



頭使うから凄い疲れるけれど、これないと本当に暇つぶしがなくなるんだぞ!しかもこの碁盤はプレセアが採ってきた木をロイドが加工してくれた仲間が私のために作ってくれた大切な碁盤なんだ。だから、この囲碁を馬鹿にする事は何人たりとも許さん…!



「 まあ、そうねぇ。本当にどうしようかしら。適当に薬ぶっ掛けたら確実に世界樹が死ぬだろうし 」

「 ハロルド、本気で頼むからそれだけはするな 」

「 わかってるわよ。流石に私だって実験できなくなるのは嫌だもの 」

「 君の人生は全部実験ですか… 」

「 あ、負けたわね 」

「 え!? 」



うそ!
そう振り返った先の碁盤の上には、黒が一つもなく。碁笥には一つも石がない



「 ………すずちゃん強いなあ 」

「 そうですか? 」

「 うん。また、暇な時に相手してくれると嬉しいなあ 」

「 では、今度はオセロはいかがですか? 」

「 え?すずちゃんオセロもあるの? 」



忍と言えども娯楽商品が好きらしい。いや、誰だって好きなはずだ。娯楽商品。私もよくやった気がする。でも未だに少し将棋がわからなくてたまに投げ出したくなるのだけれど。たまにチェスとか出来る人がいるけど、チェスはまだ興味がないからわかんないや。誰かそのうち教えてくれないかなあ



「 いつも持ってるの? 」

「 いえ、この格好のせいなんでしょうか…よく依頼のお礼に頂くんです 」

「 …それってある意味差別だよね 」

「 今のところ頂いたものは囲碁と将棋とオセロくらいなので、そういえばカルタもいただいたような… 」

「 …オセロ終わったらホールでさ。皆でカルタやろうか 」

「 はい 」



じゃあ、今はオセロから。という事で。
そうジャンケンをして私のすずちゃんの二回戦がはじまった



( その緑の板の上は、純白しかありませんでした )
( 私の黒は始めからなかったかのように消滅させられて )

( ………すずちゃんったら、容赦ないんだから! )
( え? )
( いや、手加減されると泣くので、しなくていいです )
( あ、はい )

11/0208.




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