「 ただいま戻りました 」



さっそうと入っていくプレセアの背を追いかけるようにエール、ゼロスとホールに向かい私は一番最後に入るとホールが妙にざわついていた。やっぱり世界樹の事だから、なのだろうか。いつもはそんな事ないのに。収まらないざわつきの中でリフィルが期待いっぱいの表情を向けてきて思わずバッと顔を背けた。その期待からそれてすいませんでした。ほんとうにごめんなさい。



「 どう、ジャニスを止められた? 」

「 結構、話がわかる奴だったぜ 」

「 彼、思い止まってくれたのね! 」



両手を合わせて喜ぶリフィルを見ながら、ゼロスがゆっくりと目をそらす。美しい表情で喜んでるって言うのにどうしてこうも彼は気まずくなると濁った声を出してしまうんだろう。いや、気持ちはわかるよ?私も今リフィルに名前を呼ばれたら、すぐに頭下げるね。土下座しちゃうかもしれないくらい、気持ちが追い込まれすぎてるよ!



「 思い止まってくれたんだがなぁ… 」

「 えっと、あのね、先生 」

「 おっけー、エール。説明まかせたv 」



そして説明を投げたゼロスに一発報いてやろうかと思ったら影から眼鏡が光るようなものが見えて私はそっと手をしまった。私がやらなくてもパパ組の片割れが彼を殺るつもりらしい。そっと見守っておこう。私が手を出すべくもない



「 何ですって!! 」



急にホールに響いた大声に私は肩を揺らし、エールも驚いたようでなんといったら良いのかわからずわたわたとし、言葉が上手く作れず頭を下げた。さっそうと出て行ったプレセアも頭を下げ、私もその隣に並んで頭を下げる



「 世界樹を守る事が、出来ませんでした…。申し訳ありません 」

「 先生、ごめんなさい 」

「 守れなくて、ごめんなさい 」



あなた達の大切なものを守る事が出来なくて、ごめんなさい。
声に出せない言葉だけを切り取って、頭を深く下げる



「 故障〜? 」



下げたのにも関わらず、軽い声がホールに反響して顔を上げるとハロルドが小型の機械みたいなものを持って唸っていた。唸っていたと言っても原因をいくつか整理しているようでなんとも言いがたい唸りといつか呟きのようだ



「 負の測定器を作ったんだけど何か、急に負の濃度が高くなったのよね、おっかしいなー 」



そう首をかげたハロルドは顔を上げた私達の顔を見て、機械をしまった。
何を言われるか頭の中で思い出しながら、どんな顔をして良いものかわからなくてゆっくりと目をそらす



「 まぁいいや。で、アンタ達さ。世界樹の根は守ってきてくれた? 」

「 ま、不慮の事故ってヤツ? 」

「 あっそ。まあ、想定の範囲内ね〜 」



ハロルドの頭の中では最善と最悪のほか何通りの考えがあるんだろう。この最善と最悪にも多分何通りもあるんだろうけれど。本当に何もなくてすんだとか、床が傷ついただけとか。幹ごと傷ついたとか、根を切られたとか、考えるだけで沢山ある中の、どれだったんだろう?



「 ともかくゼロスって人間の期待値を多少修正する必要はありそうね 」

「 そんなぁ、怒んないでよ、ハロルドちゃ〜んv 」



うざったそうに振り払うハロルドとあしらわれたゼロスを見ながらリフィルはため息をついた。本当にごめんなさい。こればっかりは話を改変することは、私にはできません。



「 詳しくは科学部屋で聞くわ。後で、来てちょうだい… 」



リフィルのうな垂れたようなその表情にプレセアと私が一礼し、エールが真似するようにお辞儀をした。これからどうしたらいいのか、世界樹がどうなるのかたくさんのことを考えているんだろうと思うその顔を私は真っ直ぐに見る事が出来なくて



( 私は彼が、生きる未来を壊せませんでした )
( この子の弟のような子に刃も向けられませんでした )
( だって、なにもかもが愛しいと思ってしまったから )

11/0206.




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