「 わたしが、お姉ちゃんの居場所になるから 」

「 オレとエールが出した決断はこれだけだ。なあ、お前は 」



どうしたいのか。ただそれだけの言葉を向けられるとわかっていても耳を塞ぎたくなる瞬間があるという事は誰にも私を否めないところだと思う。辛いのを受け入れる勇気は何度も言うが私にはないのだ。ならば、あの子を守るときの勇気はなんだったのかと責められれば私なりの『お姉ちゃんとしての役目』でもあったし、名づけの親として、君と冒険をして続けてきた絆だったんだと思う



「 どうにもできないよ 」



だって、私はこんなにも弱いのに。
そんな事を呟いたらみんなに殴られるんだろうなあ。



「 パニールがね、いつも一食分余らせて作るの 」

「 ! 」

「 キールはね、たまに誰かに話かけるように怒ってて 」

「 …、 」

「 チャットはたまりにたまった仕事を誰かの分だって言って箱に詰め込んでた 」



すごく言い話なはずなのにも関わらず、子供船長のそれにはなぜか悪意を覚えてしまいそうな私。え?それってもしも私が帰ったら押し付けられるってこと?本気で?箱に詰め込んでたってことから察するに多分10日くらいバンエルティア号に帰らないパターンの奴だよ。仕事が終わったらバルバトス・ゲーティアを横殴りにするやつのパターンだって



「 ジェイドは、誰もいないのにふとしたときコーヒーカップを持って振り返るの 」

「 それ、は 」

「 いつもお姉ちゃんが悪ふざけしながらも淹れてくれてたから 」



なんて、懐かしい



「 この間は、みんなが喧嘩した時も止めてくれる人がいなくて、 」

「 …みんな怪我は? 」

「 リフィル先生が治してた。けど、カノンノが 」



懐かしい記憶



「 カノンノが、お姉ちゃんのいた頃の絵を描くの 」



せめて、私が戻れるとしたらどんな顔をして戻ったらいいんだろう。いつまで立っても踏み切れない私の記憶は酷く懐かしい気持ちでいっぱいで。またみんなで思い出を作ろうにも、どう入り込んで良いのかわからないほどあの場所は



「 もう、私の入る場所なんて無いの 」

「 あるよ 」



暖かくて優しくて、私を一度受け入れてくれた



「 ここが居場所なんだよ、『浅葱お姉ちゃん』 」




( 二度目なんて図々しい )
( そう思ってしまうほど、穏やかなあの場所を )
( 君はここで作ろうとしている )
12/1217.




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