「 常磐、いつアスランと仲良くなったんだ? 」

「 仲良くって、さっき初めてお会いしたばかりですが 」



ムスッとした様子で私とフリングス将軍を見てから、腕を組んだまま玉座にふんぞり返ってみせる陛下を見ながら困ったようにフリングス将軍が笑う。いつみても子供みたいな人だよなあ、なんてため息混じりに見ていると腕の中で「ぶー」と子ブウサギこと『常磐』が鳴いた。そういえば勝手に人の名前を使うなんてと怒ってやろうかと思うままに口を開こうとするとそれより先に陛下が私の名前を呼んだ。



「 常磐。検査の結果は? 」

「 良好です。異常は無いそうですが、念の為しばらくは通う事になりました 」

「 で、アスランが『常磐』を捕まえる最中に会ったと 」

「 そういうことです 」



うーん。と唸る声に陛下が手招きをしてから私が近づくと陛下の腕がそのまま伸びて腕とウエストの隙間を手が通り過ぎ手繰り寄せられるように膝の上に腰が落ちた。私そんなに小柄じゃないのにそんなことをしたらフリングス将軍と話が出来ないんじゃないかと思うほどの行動に私の腕の中で気持ちを理解してくれたのか『常磐』が「ブー」と悩ましい声を上げている。語訳するなら何してんですかって感じだと思う



「 アスラン 」

「 はい 」

「 常磐に護身術と武術の訓練をしてやってくれ。いざという時に自分の身くらい護れたほうがいいだろう 」

「 陛下、急になにをなさるんですか 」

「 いや、普通に座っただろお前。自己危機管理力が低いんだよ 」

「 子ブウサギ抱えてるんですから抵抗できる訳ないでしょう! 」



腕の中でまたもや「ブーブー!」と私と同じく声を上げてくれるこの子は意外と本当に『常磐』なのかも知れない。どことなく性格が似ている気がする。心を許したらとことんそこに居座るところとか



「 あとだな、常磐 」

「 なにか? 」

「 お前は、俺に対して敬語禁止。陛下禁止 」

「 え! 」

「 その辺の貴族にはさぞ愛想がいいが、お前の愛想のよさは俺に発揮する必要なし! 」



って事はすれ違った貴族や騎士様方には愛想良くしておいてもいいが、俺には普通でいろって事だろうか。なんて我侭な。それもいいところなんだろうけれど、陛下禁止って言うのは、どうしろというのだろうか。



「 アスランは、くれぐれも常磐に変な気を起こすなよ 」

「 …はい 」

「 フリングス将軍はそんな人じゃないよ! 」

「 どうだかなあ… 」

「 へ、陛下、私はそのような、 」

「 俺が会話に入るまでさぞ仲が良さそうに会話をしていたお前らに弁解が出来るか? 」



う、と言葉が詰まるフリングス将軍と私に陛下、ピオニーが笑う。からかうつもりなのか本気で言っているのかが読めないところだ。が、食えない男ではないのでわりと好きな性格をしているからこそ許せる。そう思いフリングス将軍を見るとパッと目が合ってから困ったように目をそらした。どうしたんだろう、そんなに陛下と私がかぶって見えて面白かったんだろうか



「 そんな風にからかう必要ある? 」

「 ある。アスランがお前にはまったら大変だ 」

「 はまらないでしょう、どう考えても。フリングス将軍だって、ねえ? 」

「 え! 」



あら、可愛い。



「 お前がそういう気が起きそうなら稽古の係りを考え直すんだが、 」

「 !…大丈夫です! 」

「 そうか。なら、任せたぞ。くれぐれも、 」

「 ピオニー、くどい 」



スパッと切り落とした先で不安げな顔をするピオニー。彼はどうやら心配性のようだし、フリングス将軍は何か思うところがあるようだ。だけど、あの反応を見る限り好きとかそういうのじゃないと思う。距離感のとり方を測っているような感じが話し方からするのを思えば、



「 フリングス将軍、稽古はいつからが都合がつきますか? 」

「 常磐さえ良ければ、今からでも 」



彼は到底その感情にたどり着けやしないのだ。
かわいい悩み事だとは思うだけですがね
12/0920.




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