息苦しくて目を覚ました時に見た風景はあまりにもコロコロしていた。丸々と太った子豚のような体に生えた兎の耳がとても印象的で背中にある斑点模様も愛らしい。上半身を起こした私に群がるように「ブ」「ブ」と必死に声を上げてカリカリと蹄で引っかいてくるところで私に負傷の文字は無いのだ。ちょうどまくられている肌が赤くなるだけ。ヒリヒリするだけ。それ以上もそれ以下も無いこの空間。どこかの中庭の花畑の中で6匹のブウサギと戯れる私。何て微笑ましい雰囲気を発しているんだろうか、じゃないわ!!



「 どこの中庭だよ!! 」



知らんわこんな場所!一回突っ込んでみた声が微妙に響き、6匹のころっころしているブウサギたちは一旦「ブ?」と不思議そうな顔をして私を見た。かわいい。かわいいが、ここはどこですか。



「 いや、夢か 」



所詮夢落ちだ。人生そんなモンだろう。それにしても、6匹のブウサギともなると6匹分の名前を思い出してしまう。懐かしいというか登場人物を思い出してしまいかねないのだが。それもいいだろうなあ。夢の中でブウサギの名前を呼びながら戯れるなんて微笑ましい絵面だ。誰が見ているわけでもあるまいし、とりあえずこの可愛い太りっぷりのブウサギたちをころころしたい



「 ジェイドー 」

「 ブ! 」

「 アスラン! 」

「 ブ! 」



あれ、この子達返事してる…?



「 サフィール? 」

「 ブ 」

「 ネフリー? 」

「 ブ! 」



え?嘘だろ?予想以上に可愛い…。じゃない、違うんだ。いや、違わない。可愛い。可愛いけれど返事するってことは…いやいやいやいや、待て待て待て待て。冷静になれば他に二匹いるわけだし、同じ名前のブウサギだって一部のマニアに人気なペットちゃんなんだからいるだろう。わかってる。大いにわかってるよ、私。大丈夫



「 ゲルダ? 」

「 ブー 」

「 ルーク? 」

「 ぶ! 」



みんな返事しやがった。全員分の名前を呼んでからそのコロコロした体のまま私を見上げてつぶらな瞳で見つめるブウサギたちを見て、ため息がでそうになる。も、もしや、これ陛下の飼ってるペットのブウサギちゃんたちですか。そうなんですか?陛下の子達とお名前が一緒なんですけど、一般家庭の子ですよね。そうですよね。



「 いやー、まっさかあ。陛下のお宅のブウサギちゃんたちじゃー 」

「 そうだが 」



冷や汗が背中を滴り落ちる。
絶賛寒気発生中、まだ死にたくないです…



「 まったく。変な流れ星が落ちてきたと思ったら、お嬢さんが落ちてくるとはな 」



冷静になれば、あの陰険鬼畜眼鏡の名前をペットとして使うなんて陛下以外にありえませんよねそうですよね。軽率だったなあ。本当に人間一歩目というか第一声が大事だって今人生の教訓として教わった。もう二度とないね。こんな立派な教訓は二度とない



「 それで、麗しいお嬢さんは… 」



背中を向けっぱなしではいられない。覚悟を決めて立ち上がろう。そう思い足に力を入れようにも酸素がうまく回っていない気がする。目の前がフラフラするような。うまく定まらない視界に倒れる音だけが鮮明に耳に響く
12/0919.




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