「 …、 」



誰でもふと真夜中に目が覚める時があるとは思う。眠れない現象という奴だ。何か思い立ったように目を覚ました私は眼球がスースーする感覚と腕がほんのり痛んだ。虫がいないか周りを見たのだが、子ブウサギは気持ち良さそうにすやすやと眠っている。これはいつもの事。いつもの事には変わりないけれど、なんだか違和感を感じる。そう、なんだか、



「 …誰かいるの? 」



枕元に隠した柄に手を伸ばしながら、ゆっくりと息を吸い込む。心がざわめく。子ブウサギは相変わらず心地良さそうな寝息を立てて眠っているのを見ながら、なるべく起こさないようにベットから足を伸ばす



「 常磐様、 」

「 …誰、 」



素足が床に触れる感触を確かめながら、ゆっくりと柄を構えれば姿を見せた深緑の剣



「 これも陛下のご命令なのです 」

「 陛下の…? 」



姿は見えない。だが、暗殺ともなれば他国から現れた人かスパイか。または国内で私に恨みを持つ人間の仕業と考えてもおかしくはない。でも、陛下が



「 本当に、陛下が、 」



私を消すための計画をしていたら?確かに他国との戦争の際に私は邪魔になるし、弱みにもなりかねない。それを思えばこの対処は間違いではないとは思う。だけど、彼は私に言った。私に優しく言葉をかけてくれた。それは間違いではないし、意識違いでも何でもない。記憶違いでもないその言葉は本物だった。それに、この声は聞き覚えの無いような、いや、どこかで頻繁に聞いたような



「 常磐様、 」



記憶に無いわけではない。だけど、



「 う、 」



思い出そうとすれば酷く頭が痛む。どうしてだ?そういえば、腕が痛かったような気がする。いや、確かに痛んだ。痛んだから目が覚めて、それで今陛下の命令で何かしようとしていた人がここにはいて、それで、



「 そろそろ睡眠薬が効き始める頃です 」

「 よし、陛下に気付かれないよう静かに運べ。お前は馬の準備だ 」

「 はい 」



それで、私は……あれ、おかしいな。



「 …よ…ら……… 」



目の前が、薄れて
12/1218.




- ナノ -