「 …、 」



中庭で一人柄を振り回してみたけれど、何も納得がいかなかった。昨日のピオニーの一言が頭に付いて振り落としたいような気持ちさえもあるのに、できないもどかしさと彼はけして弱くは無いという気持ちでいっぱいだ。本当に弱い人間は自分の弱さを否定してしまうものだし、彼はそれを素直に受け入れるからこそ余裕があって強くいられる。それに、ピオニーはああは言ってくれたものの私自身それについては深く言えないのも確かだ。



「 常磐、一人で稽古をしているのですか? 」

「 …フリングス将軍 」



そういえば彼も強い人の一人だったな。自身の磨き方を知っているというべきなのか、自分の技術を信じて指揮さえも執ることを考えれば私には出来ない事だし、臆病な私にとっては尊敬に当たる人物でもある。どう考えても、失うリスクが大きすぎる。成功の時にあることもなかなか大きな事だと自負しているけれど。



「 君の思う強いとは、なんだと思う? 」

「 は、 」

「 いや、なんでもない 」



普通はそんなモンだよなあ、なんて息を吐いてみると少し考えたように眉間に皺を寄せるフリングス将軍を見た。



「 質問を変えます 」



せっかく考えてくれるのならば、単純でわかりやすい質問がいいのかもしれない。人にとっての『強い』を聞いても参考にはなるけれど私が納得しないのは、目に見えてわかることだから。そんな質問はただの意地悪だし、納得できない事をぶつけるのはぶしつけ過ぎる。意味の無い質問を口にして相手の時間を奪うなど、本当にもったいない



「 フリングス将軍にとって、私は強く見えますか 」



まっすぐに見据えた先の瞳が揺れ動いた。
その目に映る私は見えないけれど、きっと



「 はい 」



覚悟を決めたように見えただろう。ただ、強く見えたのならば私はその人の前で強くありたいと思うし、ただの意地っ張りだとは思っているよ。思ってるけれど私はね、私の事をそう見てくれた人のイメージに合う私になりたいんだ。



「 ありがとう 」

「 …常磐? 」

「 ん?なんでもないよ。ただ… 」

「 ただ? 」

「 自分が人からどう見えてるんだろうなあって思っただけさ 」



それだけだよ、と呟いて横を通り過ぎる私に



「 稽古なら、私も… 」

「 いや、術をマクガヴァン先生のとこで教わってくる 」



小さな声で聞こえた君の声は



「 貴女は、儚い人だ 」


そんな事、知っているよとは言えずに
12/1219.




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