耳を塞いで走りきった私は部屋に引きこもってはみたものの、ドアノックの音が止まずにいた。窓から逃げ出そうにも下を覗き込めば兵隊さんたちが沢山いて逃げ出せずに小さくため息をつきながら子ブウサギを抱きしめた。どうせ、城から追い出すつもりならここから逃げ出したっていいじゃないか。だけど行く当ては無い、せめて地図があればギルド『アドリビトム』に関わる事も出来そうなものだけど…



「 常磐、ここを開けてくれ 」



座ったベットが軋む。子ブウサギを撫でながら、ぼんやりと外を見ればうすら暗くなっていてさっきのことからどのくらい時間が経ったのか予想すらできなかった。確かに、私はこの世界の人とは違う体の作りになっているのも知っているし、それについては反論できないどころか正しく研究者にとっては絶好の得物のようなものだと気付いている。それに、この国が戦争をするとすれば、私なんかはただのお邪魔虫だ



「 ちょっと、扉から離れてろよ 」



え、と声を出してしまいそうな私がふと扉を見つめた先、ほんのり埃が舞い上がり扉が横にあくのではなく尋常ではない音と共に縦に開いてそのまま床に叩き伏せられた板があった。え、なにその踵落とし



「 …お前はここにいていいんだ 」

「 ! 」

「 アスランだってそう思ってるんだぞ 」



ゆっくりと近寄る足音に子ブウサギを抱きしめたままベットの上であとづさるとやんわりと微笑んで私へと腕を伸ばしながら



「 あんな会話したくもない上に、常磐に聞かせたくないのにな 」



そう呟いた。お前は、傷つきやすいから。それなのに意地っ張りだから言葉にするのを迷うんだよな。と幼子をあやす様に私の背中を優しく叩いて様子を伺うようにほんのりと目を合わせる



「 私が弱いから、 」

「 お前は弱くない 」

「 え? 」



その青い目に自分が映ると同時に儚げにピオニーが笑った



「 本当に弱いのは、俺だ 」



あの雨の日と似たような目をした彼は、そんな風に笑っていた。私は弱くないと言いながら、自分の弱さをさらけ出すように笑っている。そんな彼に手を伸ばしていいのかもわからない私の両の手は宙をさまよって触れられそうで触れてはいけないようなその背中で止まったのだ。儚げ、というのは触れてしまってはいけないと思うほどのことだったかと自分の脳を疑うほど



「 俺なんだよ 」



いつも輝いていた瞳が、



「 こんな思いをさせて、悪かった 」



壊れそうに歪んでいた
12/1218.




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