「 ちょ、ちょっと待って 」
ころころと転がるよりも少し遅いくらいのスピードで駆け抜けていく子ブウサギを追いかけながら、横を通り過ぎるメイドさんたちに頭を下げると口元に手を当てて何かいいたそうな顔をしていたが、いいたいことはもう大体分かる。私をお転婆扱いしたいのだろう。またはじゃじゃ馬。今の状況からそんな事を考えながらまっすぐ駆け抜けていく子ブウサギを追いかける足が止まる訳もなくたどり着いた先で、小さな蹄が足を止めた
「 もー…なんで急に走りだ、 」
「 検査結果に異常は無いんだな 」検査結果。扉越しに聞こえたピオニーの声に子ブウサギが怪訝な顔をして私を見ていた。ピオニーが病気という話も聞いたことはないし、今のところこの城で病気というか検査を受けているのは私だけだと医師が言っていたのを考えれば、私のことか?
「 はい。それにしても、あの娘を陛下はどうするつもりでしょうか 」
「 どうって? 」
「 これからの戦争であの娘が危険に遭うのは目に見えてわかること。さらに捕まれば、彼女の体は研究者にとって、 」
「 …わかっている。わかっているが、常磐は 」ゆっくりと地面を見つめた。
静かに響いて聞こえるその声に集中するために
「 巻き込むべき存在ではないと、わかっていながら何故傍に置くのです。得体の知れないものだとは、陛下もお気づきで、 」
「 黙れ 」
「 っ 」その低い声に、小さく肩を揺らすと子ブウサギが私の足元に寄ってきてそっと見上げる。ピオニーが怒っているのだ。私情的な怒りだとわかりやすいほど声に出して。あんなに寂しそうな顔を見せた後こんな怒りもむき出しにするのかと、どこか安心してしまう私をよそに心臓はその声にざわめいていて
「 常磐の事は、俺が… 」
「 陛下 」そっと自分から扉を押していた
「 常磐、 」
でも、足は
「 おい!待て、常磐! 」
その話さえもその声さえも聞きたくないと駆け出す。後から追ってくる陛下の声と子ブウサギの足跡だけが耳に残る。ざわめく胸がどうしてなのか酷く痛んで。それが辛くて、目の前が優しく滲む中で耳を塞いだ
「 なにも、聞きたくない 」
自分の声だけを頭に残して
12/1218.
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