稲妻SS | ナノ

片想いふたり




・五条さんの一人称が私
・捏造注意




「よし、今日の練習はここまでだ!」


日も暮れかけた頃、鬼道の言葉を合図に部員達は練習を止め、「あちー」「腹減ったー」「もう一歩も動けないっス〜」などぼやきながらぞろぞろと宿舎に入って行く。

鬼道も皆に続き宿舎に入ろうとしたのだが、お兄ちゃんはこっち!と春奈に手を引かれ、宿舎から数メートル離れた場所にある黒塗りの高級車のもとへ案内された。


「春奈、誰か来客か?」

「あはっすぐ分かるよ」


じゃあ後はよろしくね、と春奈は道を引き返した。
仕方なく車に歩み寄ると、中から見覚えのある人影が出て来て鬼道の表情が和らいだ。


「久しぶりだな」

「お久しぶりです、鬼道くん」


そこにはかつての仲間―…いや、チームや学校は変わっても仲間であることには変わりない。
帝国で共にプレイしてきた仲間、五条勝がいた。


「こんなところまで来るなんて、何か用事があったのか?」

「ええ。これを届けに」


そう言い手渡したのは、鬼道が帝国に在学していた頃に使っていたミサンガだった。
そのミサンガは源田が帝国メンバーでお揃いのものを付けようと編んだ物で、鬼道が雷門に転校する際に自分にはもう付ける資格がないと外した物なのだが。


「五条、悪いが帝国を去った今俺には付ける資格がない」

「ほう…使わないミサンガは捨ててしまうというのですか。源田くんが一生懸命編んだミサンガを、私達との思い出ごと綺麗さっぱり捨てると。そう言うんですね」

「………悪かった。受け取ろう」


五条には敵わないな、と苦笑すると、後ろから「おーい!」と円堂が手を振りながら走ってきた。


「鬼道ー!そろそろメシだぞー!そこの人も良かったら一緒に食ってけよ……って、あれ?お前五条か!?わー!久しぶりだなー!」


円堂はほとんど一方的に喋って五条の背中をばしばしと叩く。
五条も特に気にすることはなく、ええ久しぶりですねと返した。


「円堂も言っていることだし、五条も時間があるなら宿舎で食べて行ったらどうだ?」

「そうですね…この後は特に予定もないですし、ご馳走になりましょうか」

「やったー!じゃあ俺、みんなに言ってくるな!」


お前らも早く来いよー!と言い残して円堂は走って宿舎へ向かった。
小さくなっていく円堂の後ろ姿を見る鬼道の優しい眼差しがゴーグル越しに見える。そこには明らかに友情とは違った感情が含まれているのを五条は感じ取った。


「鬼道くんは、円堂くんのことが好きなんですねぇ」

「な…っ、何を言う!俺達はチームメイトで…」

「じゃあチームメイトじゃない私は円堂くんのことが好きでも問題ありませんね」


ぐ、と言葉に詰まる。円堂め、まさか五条まで虜にしていただなんて。円堂守という男はあちこちで無意識にタラシこんでくるのだから困ったものである。



「…問題はないが、訂正がある」

「おや何でしょう?」

「俺も、円堂が好きだ」


挑戦的な笑みを向けると、五条はいつもの笑顔のまま「そうですか」と笑った。



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