稲妻SS | ナノ

おそろい




「円堂ぉーっ!お前これわざとだろー!」
「えっ何が?」

雷門中部室に、何をやっても中途半端で有名な半端…ではなく半田の声が響き渡っている。
普段は声の大きさも小さくもなく大きくもないのだが、部室の外まで聞こえるほどの大声に驚いた円堂は持っていたサッカー雑誌をパサリと落とした。

「見ろよこれ!前に円堂と撮った写メ…俺半分見切れてるじゃん!」

ずいっ、と自分の携帯に保存された画像を見せると、円堂と半田の2ショット(見事に半田の顔が半分フレームアウトしている)があった。それを見た円堂は苦笑しながら後ろ頭を掻く。

「ゴメン、俺写真なんか滅多に撮らないからなぁ…慣れてないんだよ〜」

本当に悪気があってしたわけではなく、ただ単に写真が下手なのだということが分かれば責めるわけにいかず、半田はぐぐ、と言葉につまる。けれどこんな写メじゃ満足はできない。

「なぁ、だからもう1回…」

撮ろうぜ、という言葉に部室の戸が開く音が重なる。半端なだけではなく運もなければタイミングも悪い男、それが半田真一である。

(誰だよもおおおおお!早くしないと円堂と2ショット撮れないだろお!)

恨めしげな瞳で部室の入口を見ると、そこには染岡が立っていた。半田の視線に気付いた染岡は、何だコイツと思いながらもあまり気にすることはなく空いている椅子に座る。

すると何かひらめいたらしい円堂は「そうだ!」と言って机を叩いて立ち上がった。

「染岡!俺と半田の写真撮ってくれないか!?」
「あぁ?…まあいいけどよ」

じゃあ頼んだぜ、と円堂は半田の携帯を染岡に渡して隣に並ぶ。え、え、待て待て。この10秒ほどの間にいろいろ進みすぎじゃないか!?半田は軽くパニック状態になった。

(やべ、円堂はもちろん染岡まで天使に見えてきた…)
「半田!もっとくっつかないとまた見切れちゃうぞー!」
「え…っおわあッ!」

がばっと円堂の腕が肩にまわされる。近いし、何かいいにおいするし、かあっと自分の顔に熱が集まるのが分かる。こんな顔で撮ったら恥ずかしすぎるだろ。

「いいかー撮るぞー。3、2、1…」
「わーっ!ちょっとタンマ…」

カシャッ。

馬鹿染岡!とさっきまで天使だ何だと言っていた人間に心の中で悪態をつく。画面を見なくても分かる、自分は真っ赤で情けない顔をしているのだろう。

あんなに近くにいた円堂はあっさりと離れて染岡のところへ写真を見に行ってしまうし…。うー、くそぉ染岡!あんまり円堂とくっつくなよ!

「おーい半田!お前は見ないのか?」

どうやら赤外線で自分の携帯に画像を送り終わったらしい円堂が声をかけてきた。

「見るけどさぁ…」

泣きそうな声で返事をし、携帯を受け取る。ぱかっと開けるとそこには先程撮ったばかりの俺と円堂の写メが待受にされていた。いや待受は恥ずかしいだろ!

「ちょ、染岡おまえ何勝手に人のケータイ…」
「バカ俺じゃねーよ円堂だよ!」

円堂が?驚きと少しの期待を込めた視線を向けると、円堂は俺に眩しいほどの笑顔を向けて自分の携帯のディスプレイを見せてきた。

「ほら!俺とおそろい!」

円堂の携帯の待受にも俺と同じ画像があった。ああ、駄目だ俺。幸せすぎて死ぬかもしれない。今日くらいはいろんな人に優しくしよう。

「ありがとう円堂…ありがとう染岡あさん…」
「誰がお母さんだ!!!」

染岡の怒鳴り声ですら、今の俺には天使が吹く祝福のラッパの音にしか聞こえなかった。




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