稲妻SS | ナノ
ライバル兼友達
「基山さぁぁあん!聞いてくださいよおおお!」
「はは、なんだい?」
ヒロトと立向居は意外と仲が良い。円堂に惚れている者同士、よきライバルであり、よき理解者なのだ。
最初は恋愛面においてはライバルでしかなかったのだが、2人同時に熱烈アタックをして同時に玉砕することが多く、仲間意識から友情が芽生えたというわけだ。
それからというものの、毎週金曜日の放課後はファミレスで円堂のことについて語り合うほどの仲に。今もその語り合い中だ。
「俺、円堂さん円堂さん言いすぎたせいか『立向居は犬みたいだな!』とか言われちゃって、それって完全に男として見られてないってことですよねぇぇえ!?」
「うん、そうだね」
「わあん!基山さん酷いですー!」
ワッと泣きまねをして机に突っ伏す。ヒロトは、確かに犬みたいだなぁとぼんやり考えながら注文したコーヒーに口をつけた。すると、アルコールは入っていないはずなのにヒロトのテンションが一気にあがる。
「でもさぁそんなの全っ然マシじゃないか!!俺なんて円堂くんにちょっと触ろうとしただけでファイヤートルネードとかツインブースト飛んでくるんだよ!?円堂くんには全く意識されてないのに他の男からのこの警戒っぷり!」
「あ、そういえばあの時スパイク投げたの俺です」
「あれ?君、後輩だよね?俺一応先輩なんだけど」
だから遠慮してボールじゃなくてスパイクにしたんですよ、と立向居はけろりと言ってみせる。ヒロトは口先をとがらせジトリと睨んだ。そして立向居はため息をひとつ。
「あーあ、円堂さん、振り向いてくれないかなぁ」
「言っとくけどもし円堂くんが立向居くんのこと好きになっちゃったら、俺は君を殺して円堂くんを監禁するよ」
「…基山さんが言うと冗談に聞こえませんね」
苦笑いでそう返し、オレンジジュースをちびりと飲む。冗談ではないのだろうなと思いながら。14歳の少年にこんな物騒なことを言わせるなんて、恋愛とは全く恐ろしいものだ。
いや、本当に恐ろしいのはそれだけ惚れ込ませる円堂守なのかもしれない。
「円堂さんはやっぱりすごい人ですね」
「ほんと、さすが俺の守って感じ」
「誰のものですか!誰の!」
こんな時間が続くのも悪くないかもしれない
(あっ今日財布忘れたんで基山さんよろしくお願いします)
(…君って本当いい度胸してるよね)
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