佐久鬼、佐久円
「綱海!不動にパスだ!」
「おう!」
皆がワーワーと練習をする中、ベンチで休憩している佐久間には鬼道しか視界に入らず、また鬼道の声しか耳に届かなかった。
「鬼道さんは今日も麗しいなあ…」
つい口から漏れでた言葉に、隣に座っていた円堂は「うるわし…?」と首をかしげた。
「なあ佐久間、麗しいってどういう意味なんだ?」
声をかけられ、佐久間は初めて円堂が隣にいたことを知る。別に驚きはしなかった。ああ、いたのか、そんな程度の感情だ。
「鬼道さんは今日も美しいってことだよ」
鬼道から目を逸らさず、言葉だけで円堂へ伝える。円堂はふうん?と口の中で呟いた。
「あ!じゃあ佐久間もウルワシーってやつだな!」
「!」
思わずバッと円堂を見る。すると、あまりの笑顔の眩しさに俺はウッと呻いた。
近くにいたマネージャーが慌てて振り向いたがすぐに何かを察したような目をして作業に戻っていったのが気になる。
「や、やめろ!そんなことを言ったって俺は円堂教には入らないぞ!」
自分でも何を言ってるか分からなかったが、円堂のほうが分かってないらしく(そりゃそうだ)「え、円堂教…?」とまさに何言ってるんだこいつ的な顔をしていた。
「よくわかんないけど、サッカーやろうぜ!」
「うわぁぁぁあああああ鬼道さん助けて洗脳されるうううううう!!!」