Heart:6
「えっ帽子屋の領地まで行ってしまったんですか?!」
「帽子屋…?」
気づいたら寝てしまっていた。一体どのくらい…と思いながら部屋を出てフラフラしているとたまたま黒子くんと出会い、外出時のことを心配された。
すっかり寝こけていたと言う私を食事に誘ってくれて、ついでとばかりに外出時の話をしてみた。
危険値のメーターが完全に振り切れている変わった人たちは”役付き”なのではないかと、半ば確信しながら質問すると、黒子くんの猫耳がピクピクっと動いた。
「帽子屋…そうですね、いわゆる”マフィア”ですよ。」
ぼとぼととパンが膝上に落ちていく。
な、なんですって?!
「マフィア…?!あのマフィア?!」
「あなたが元いた世界にもマフィアという存在は認知されているんですね」
慌てて膝上に落下したものをお皿の上に戻しながら、時間差で襲ってきたリアルな恐怖感にぶるりと身体が震える。
「実際に見たことなんてなかったわ」
黒子くんはカチャカチャと武器を弄り、あっという間にバラしていく。解体された銃は、ひとつひとつが独立したただの部品となった。
銃の種類なんて分からないけれど、今目の前にある銃ときっと対して変わらない物を突きつけられた。一瞬で、一弾でわたしを殺せる掌サイズの武器。とてもじゃないが、わたしには荷が重すぎる武器だ。
「あなたは…大変運が良かったです。殺されてもおかしくなかった。」
怪我はないですか?と心配そうに窺う黒子くんに、まさか銃を突きつけられ、引き金を引かれたなんて言えなかった。
「だ、大丈夫よ。それより簡単にその、帽子屋?について教えてくれるかしら」
誤魔化す様に身を引いて、続きを促す。
ささっと目を動かし、外傷のないわたしを確認してから、彼は眉をしかめて一言、
「救い用のないゲスです」
と。
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