Heart:4



「随分と勇ましい”余所者”じゃねーか」


いつの間にかわたしの背後にいた誰かに背中でぶつかり、そのまま支えられるように肩で受け止められた。


「やっぱ余所者か」

「分かってんなら、始末しようとすんじゃねーよ、瀬戸」


わたしに向けられていた銃口が下ろされて、生きた心地のしない空気からは解放されたけれど、いまだに緊張の余韻で、どくどくと心臓が早鐘を打つ。


「敷地内の殺傷は許可取れって何度言えば理解すんだよバァカ」


どうやらわたしを殺さない、と判断してくれたのは彼らより立場が上のようだ。斧を持った瓜二つの双子はわたしを殺せないことにがっかりとしながらも、”余所者”という存在の方が気になるらしい。

さっきとは違った興味津津という目でこちらを見てくることに居心地が悪くなり、その視線から振り切るように背後をふりかえった。


「ありがとう、助かっ…」


目の前にいる人に驚きが隠せない。失礼だと分かっていながらも、おもわず相手の顔を凝視してしまう。

ドクンとさっきよりも心臓がゆっくり大きく跳ねた。

そんな、まさか…


「こちらこそすみません、部下が失礼な態度をとってしまったようで。」


いっそ爽やかすぎる作り笑顔で微笑まれたけれど、わたしは完全に彼の容姿に狼狽えてしまい、思い切り突き飛ばしてしまった。


「…っ?!」

「あっおい!」


瀬戸とかいうウサギミミの男が何か言っているのが遠くから聞こえるけれど、わたしはそのまま走って森を抜けた。

全力疾走に身体がついていかず、ぜいぜいと肩で息をする。

「な、なんで、」

あの人の容姿と瓜二つなの…っ

あまり思い出したいとは思えない記憶が、ぼやっと浮かんできて打ち消す様に頭を振った。

そんな、いくら夢の世界だからってあんまりだ。
着てる服装、態度、話し方で全く別人の他人の空似だということは情報として理解しても、反射で身体が動いてしまった。

そもそもこの世界は、あの人のいる世界ではない。

助けてもらったのに失礼な態度をとった自覚はある。


けれど少しでも期待した自分が嫌で嫌で、とってもじゃないが戻る気になんてなれなかった。



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