フクロウ


「花宮くんは何かペット、飼ってる?」

車内販売で買い占めた魔女鍋スポンジケーキを食べながら、いろはは首を傾げる。先ほどコンパートメントに訪れた花宮の同級生である原は、手にペットを持って訪れていた。古橋同様、出身不明のマグル育ちである花宮の’お気に入り’が気になって見に来たのだ。

「原くんのネコは、すごくお利口だったね」

コンパートメント内に広がるお菓子が気になったのか、原の腕から抜け出したネコは、ひらりといろはの膝に着地。その身軽さにびっくりしているいろはを他所に、くんくんとにおいを嗅いでいる様は撫で回したい可愛さだった事を思い出す。そのまま飼い主を置いてコンパートメントから外へと行ってしまったが、きっとあの賢いネコはきちんと飼い主の元へと戻ってくるのだろう。

「あぁアレ、ネコじゃねえ。ヤマネコ。」

ヤマネコとネコの区別すらつかないいろはに、ピューマとかヒョウの小型バージョンだと説明する。要するにネコの仲間である事には代わりはない。

「俺はミミズク。今は荷台に積んでるけどな」

花宮のペット、ベンガルワシミミズクはオレンジ色の瞳が特徴で、とても賢い動物だ。いろはは花宮が話すミミズクの話しに聞き入る。今までミミズクやネコはおろか、ペット自体を飼育した事がないため余計に羨ましいと感じていた。

「学校についたら、見せてね」

自分も何かペットが欲しいなとは思うものの、きちんと飼育した経験のない自分がはたしてペットを飼うことなど出来るのだろうか。それにペットが欲しいのならダイアゴン横丁にある専門店で購入する必要があるはずだ。学校に入ってしまえば飼う機会なんてないのだから、たまに花宮のミミズクを触らせてもらおうと結論づけたいろはは、花宮がふと自分を見て楽しそうに笑っていることに気づく。

「ど、どうしたの?」

ちらりとドアの外に視線をやった花宮は、立てた膝に腕をのせ楽しそうに笑いながら一言。

「オマエに入学祝い」

がらりと開いたドアから入ってきた背の高い初対面の男子学生が抱えている大きな籠。そしてその籠の中に入って、きょとんとした表情をしているのは

「ミミズクだ!!」
「残念、フクロウだ」

背の高い男子学生から花宮は一度籠を受け取る。背の高い男子学生は今訪れたばかりだというのに、用は済んだとばかりにさっさと扉をしめて行ってしまった。

「わたしに!?ほんとに!?」

ゆっくりと、慎重に籠を受け取ったいろはは、嬉しさのあまり目に涙を浮かべて喜ぶ。

「わたし、こんなに素敵なプレゼント、生まれて初めて!ありがとう真くん!すごく嬉しい。」

ありがとうを繰り返すいろはを籠にしまわれているフクロウは不思議そうに見つめている。

「なんていう種類のフクロウなの?すごく可愛い。」

「ウサギフクロウ。そりゃー可愛いがウリのフクロウだからな」

ピンと耳飾りのある様は一見するとミミズクの様にも見える。実際花宮もミミズクのつもりで注文したのだ。品種をきいてフクロウだったのは誤算だったが仕方がない。早急に取り寄せ、瀬戸に持ってくるように手配してあったのだ。

「ありがとう!花宮くんもフクロウもだいすき!」

いろはに抱えられた籠の中、ミミズクも小さく鳴き声をあげた。



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