06


よりにもよって、こんな知り合いで溢れてる教室で声なんかかけてくるなんて思いもしなかった。

例えば今朝みたいに人が疎らだとか、時間帯でいうと昼間は絶対あり得ないと思っていた。

真くんのことだから、わたしの浅はかな考えですらお見通しなのかも。
わたしとしては真くんにバレた今、真くんとの関係を「同級生のひとり」というあくまで顔見知りという設定を貫きたかった。声かけられたら、話はするよ、みたいな。
まさか幼馴染だなんて間違っても知られたくない。真くん自身から嫌がらせされるのも嫌だし、真くんブームがなぜか起こっている今、無駄に敵を作りたくなかった。

こんなわざわざ教室まで呼び出してもらってまで、会話する関係なんて、周囲には変に深読みされそうだ。

違うんです!わたしは決して彼とは無関係なんです!

いっそ声を大にして言いたいのに、わたしの喉は真くんを前にするとひきつった様に何も言えなくなる。
そんなわたしの心の心境も虚しく、扉ではにこやかという名の猫被りスマイルを顔面に張り付けた真くんがコッチ見てる。

え、いろは友達だったの?何やらかしたんだーい とか言ってるけど、首を横に振るしかない。違う、違うの。友達なんてそんな生易しい関係なんかじゃない。

早く行ってこいと背中を押され、確かにこれ以上真くんを待たせるのもまずいと思い、なるべく早めに扉に近づく。これ以上の注目が耐えられず、後ろの扉から出て、真くんの元へ向かった。

わたし、生きて帰れるの?



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