09


結論から言うと、バスケットボール部男子の雑用をしろというご命令だった。

この学校はそこそこバスケが強いらしく、そこそこな部員数がいる為にマネージャーがこなす用な仕事は後輩がするらしい。(友達に教えてもらった。なぜ知っている)

ただ膨大な洗濯の量や、飲み物の用意など、いちいちやってられっかということで、マネージャーの募集を始めたらしい。

バスケ部を覗き見する生徒が現れるくらいなんだから、マネージャーのひとりやふたり、簡単に集まるだろうと思っていたのだが、募集した時期が遅かったのと大々的に宣伝しなかったせいか、希望者ゼロ。在校生はもちろん、新入生だって部活に入部済みだ。


「うん、普通嫌だよ。誰が好き好んで雑用したいって思うの。」

ズズズと紙パックのストローを吸い上げる。しかもわたしはマネージャーじゃなくてさらに格下の雑用。

「じゃぁ断ったらよかったじゃない。」

「こ、断れないよ!」

言わばわたしの立場は、真くんの言動ひとつで揺るぐのだ。か弱い立場にいるのだ。

「で結局花宮真とは友達なの?」

「ただ単にいろはの顔が好みだったとか?」

「同中出身?」

紙パックをふるとカタカタとストローがぶつかる音がした。最近ブームのイチゴオレはあっという間に飲み切ってしまった。


「…黙秘権を行使したい」

散々聞き出しといてそれかいという四方からの目に、そろりと視線を外す。

だいたいどっから話せばいいというのだ。幼なじみというのは過去の関係であり、それじゃぁ今の関係をなんだと言われたら…

「…雇い主と雑用…?」

「ブハッ!」

斜め前の友達に盛大に吹き出されトマトがコロコロと机の上を転がって行った。わたしは黙ってこちらに転がってきたトマトを箸で摘み、そっとお弁当箱に戻しておいた。


「もう!他人事だと思って!みんなで雑用係になろ!」


ひとりじゃ不安だよというわたしの訴えはのらりくらりとかわされたのだった。ほら!みんな面倒くさいんじゃん!



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