◎面倒見のいい花宮




「今はほっといて!」


ぐずっと鼻を鳴らして涙でぼろぼろな顔を膝と手でガードする。今は八つ当たりしちゃうからどっかいってくれないかな。


「チッ めんどくせーな。さっさと帰るぞ」

座り込むわたしの腕をぐいぐい引っ張ってくる。無理矢理立たせようとしてくるけど、私は私で維持がある。全体重かけて上に引っ張られる勢いに逆らう。

「や〜だ〜」

「ハァ…おまえ重すぎ」


どさり

パッと手を離され、抵抗のなくなった勢いのまま、床に転がる。なんだこの仕打ち。
なんなんだろ…なんで私、床に転がるはめになってるんだろう。

あまりの脱力感に体育座りを横向きにした様な体制で床に転がり続ける。泣いてほてった肌には、冷たい床が心地いい。



「帰りに、」

「…」

「帰りにアイス買ってやるからいい加減に起き上がれ」

「ハーゲンダッツ全種類」

「調子のんなバァカ」


ぼってり腫れているだろう顔を花宮くんへと向ける。花宮くんの肩にはスポーツバックと一緒に、私のスクバがかかっている。教室に置いてあったのを持ってきてくれたんだ。


「フハッ 顔スゲーことになってるぞ。」


言われなくても分かってるよ。
渋々起き上がった私を待つことなく先に歩き出す花宮くんを、袖で目を擦りながら追いかける。


ボロボロボロボロ


それでも、まだまだ涙が止まりそうにない私の腕を引っ張って歩いてくれる花宮くん。

私のクラスの下駄箱までついてきてくれて、先回りして外履きに履き替えるとおざなりに腕を引っ張って先導してくれた。

すっかり薄暗い自転車置き場に着いた頃にはいい加減涙も流し切れて、時折光る電柱の灯りを頼りに二人乗りで帰った。



「アンタに言われる筋合いなんてないんだよーー!!」


大声で叫ぶとすっきりした。
冷たい風が頬にあたって気持ちがよかった。

ありがとうという意味をこめて、ぎゅっと抱きついたら、自転車がグラリと傾いだ。

まだまだ瞼は重たいけれど、気持ちは随分軽くなった。


うん、また明日から頑張ろう。










※あけましておめでとうございます!


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