◎氷室さんと従兄弟同士
昼休みまであと30分。テスト前でほどよい緊張感を保つ授業中、後ろの席の氷室さんがうるさい。
「ねー」
「なに?」
「ねーってば。」
「だからな あ に」
「ねーねー」
うざい!すごくうざい!
シャーペンでつつくのやめて!ほんうざい!しかも微妙にくすぐったい。
「…ちょっと待ってて、今は待って」
「まてない」
こしょこしょ
「ちょっ本気でやめろって言ってんでしょーが?!」
思いっきり振り返った。思いっきり振り返って勢いあまって小声がそこそこ響いて、周りの子たちがクスクスと笑ってる。
「やっとこっちむいた」
こいつ…一回しめたろか。
「あのさ、今授業中なのはわかるよね?わたしだってテストやばいの。ほっといて。」
「うん、だから俺にノート貸して。」
「自分のノートあるよね?」
「今日たまたま忘れてしまってね」
「寮まで走ってとってくれば?」
自分のあざとさをよくよくわかっているであろうタツヤは控えめに首を傾ける。
「お願い、明日には持ってくるからさ」
でた”お願い”。
困ったように笑ってるタツヤを見て周りが氷室側につく。
くそっ顔面格差反対。
こうやって一言控えめに笑えば、自分の思い描く世界が築けると思ってるんだ絶対…!!
「…わかった、とりあえず3限の。」
これ以上反抗しても最終的におれるのはわたしだし(学習済)もう潔くいこう。
「いろはの字って小学生の頃から変わってないよね」
「返せ!今すぐ返せ!」
もうほんと、こいつ背負い投げしたい。
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