→かみさま、あのね(続)


まこちゃんが結婚式でタキシード着ちゃったり、生まれた子どもの世話やいたり、それってすっごく微笑ましい未来だな。

…それを隣で見れない事が少しだけさみしいけど。






かみさま、あのね







あの日、バスケがしたいとまこちゃんを誘ったのはわたしだった。冬休みの宿題もそこそこにこたつでのんびりしているまこちゃんを引っ張り出して寒い外に無理矢理連れ出した。バスケがしたいと言ったわたしにまこちゃんは渋っていたけれど、お年玉の変わりにお願いと強請った。

お年玉ってなんだよって笑うまこちゃんに、わたしもつられて笑顔になって、外に出るならしっかり防寒しろと怒られた。


わたしがまこちゃんとバスケした最初で最後の日になった。


学校は空いてないと検討をつけ、最初から公園に向かっていた。まこちゃんがバスケしている体育館に比べたら、とってもお粗末なバスケコート。たった二つ、適当な感覚に配置されているバスケゴールに線もなければ、ただの砂が足場のコート。わたしは下手くそなシュートを見よう見まねで打っては、まこちゃんにダメ出しをされていた。

「体力も腕力も、ほんとねーな」

「じゃぁ体力と腕力つける為に、バスケ部入ってもいい?」

「ダメ」

「…マネージャーも?」

「募集してない」

まこちゃん意地悪だねと言ったら頭をポンポンしながら、バスケなら俺が教えてやってんだろって言われた。これからも頼んだら教えてねというお願いには、はいはいという適当な返事が返ってきた。

わたしにはあまり教えてくれなかったけど、まこちゃんがこんなに長くバスケを続けられるのはわたしは凄いことだと思っていた。

幼少期、わたしと一緒に習ったピアノも、プールも、習字も、一年以上続いたことなんてなかった。何でも器用にこなすまこちゃんは、それこそあっという間にコツを掴んで周りがほっとかなかったけれど、途端にパッと辞めてしまっていた。わたしはピアノひとつこなすだけで精一杯で、まこちゃんみたいに色々習い事がしたいと言った時のまこちゃんの困った顔が忘れられない。

だからまこちゃんがバスケをこんなに長く続けているのは凄く驚いたし嬉しかった。まこちゃんが部活仲間と体育館に行く姿をこっそり教室の窓から見るの、大好きだった。

まこちゃんのこと、わたしは誰よりも大好きで、大好きなまこちゃんが大切にしているボールが外へと転がるのは見過ごせなかった。


その時には人がだいぶ増えていた。いつの間にか近所から集まった子供たちで賑わって、まこちゃんにシュート打ってとお願いする子供も出てきた。抱っこをせがんでゴールしたい子供と、粗雑ながらも子供を持ち上げてるまこちゃんがなんだかおかしくて、わたしはずっと笑ってた。

そしたら視界の隅でまこちゃんのボールが転がるのが見えた。条件反射で追いかけていた。






かみさま、あのね。一日だけ会わせて欲しいの。

そしたらほら、わたしはね、まこちゃんに笑ってこういうの。


だいすきって。








わたしの名前を焦った様にまこちゃんが呼んでいるのは、なんだからしくなくて。それだけか心残りだった。


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