◎トップシークレット(霧崎)


入学して早3ヶ月。わたしの幼馴染の知名度は、学校中に広まっていた。

「なぁ。」

「・・・なに」

’無冠の五将’なんていう皮肉げな通名に、噂に違わない身体能力。その身体能力にプラスされた頭の回転の早さはスポーツだけではなく、当たり前のように勉強面にも反映され、夏休み目前に行われた期末テストは学年1位。クラスは違っても話題の中心である花宮真とのおよそ’幼馴染’にあたるわたしにとっては全く持って遺憾である。

「おまえ花宮真の幼馴染ってマジ?」

アホみたいに背の高い彼、山崎くんは入学してからもう一体何度目かと、いい加減聞き飽きたとも言える質問を遠慮なくしてきた。うんざりだと言いたいかわりにため息をひとつ。そんなわたしの機微を悟れないのかじっと訝しんでいる視線を寄越される。

「…そうともいえる」

笑って返答してたのも最初の5回目くらいまで。7回目を過ぎてからは数えるのは無意味であると気付き、興味本位なのか会話の糸口として使いたいのかどっちにしろわたしにとってうんざりとする質問には変わりない。

「なんだよ、はっきりしろよ。」

不貞腐れてるのか、わたしの返答が気に入らないのか眉間にシワを寄せられているが、だったらなんだというのだ。わたしが、そうと、そうじゃないとも言ったって「でも花宮くんが・・・」で続けらるんだったらわたしに答えを求めるだけ無駄なんじゃないだろうか。一生徒同士であっても、片や話題の中心を本人がいてもいなくても闊歩している生徒だ。普通はそっちの話しにみんな信憑性を持つんだから、わざわざわたしに確認する必要はないのではないだろうか。

「たまたま同じ幼稚園で、たまたま同じ小学校で、たまたま同じ中学校だった間柄を、幼馴染だと言うならそうなんじゃないの!?」

付け足すのならば、幼稚園から中学まで一度もクラスを離れたこともない。今まで全ての行事で花宮真がいなかったことはない。修学旅行も春の遠足も、学祭も体育祭も合唱祭も全部!あー!神様!高校では違うクラスにしてくれてありがとう!どうかこのままあと2年間は同じクラスにならないようにちょちょっと魔法でもなんでもしてください!

「お、おう・・・」

わたしの眼力に山崎くんは引き気味だった。こんなこと、いちいち言わなくたってどうせ学年中、いや学校中が知っている。わたしは一言たりともそんなことは言ってない。幼馴染だと否定した事もないがわざわざ私立高校でわたしと花宮くん以外で同じ中学出身者はいない状況で、考えられることはただひとつだった。アイツが、何かにつけて嫌がらせのごとくわたしの名前を小出しにしたに違いなかった。クソが。

「で?何?」
「いや聞きたいことが・・・」

いきなり言いにくくなったらしい。口ごもり始めた。

「花宮真ってどんなやつ?」
「・・・は?」

おそろしくまぬけな返事を返したのをどう捉えたのか。急にお喋りになった山崎くんはべらべらと話しだす。

「いやオレ、花宮真と同じ部活なんだけど、あバスケ部な?ってか知ってか。まぁ同じ部活っつてもオレはレギュラーじゃねーしあんまりしょっちゅう話すわけじゃねーし。でもなんつーかレギュラーとはいえ花宮だって一年だから俺らと同じことヤらされるわけじゃん。つーことは一見無縁そうなオレでも関わる機会がるわけ。そしたら来週から週番組むことになって。まぁオレとしてはなんつーか事前調査?みたいな?てか」
「話長い!」

女子か!おまえはおしゃべりな女子高生か!

「結局聞きたいことって何?一言で!」
「・・・・」

簡潔に!短く!わかりやすく!とさらに畳み掛けるわたしに山崎くんは一瞬考えこみ

「花宮真って結局どんなヤツ?」

とっても他人まかせなんじゃないのぉ?という質問をされた。

「・・・・・・・・」

どんなヤツって、どんなヤツって一体何を期待してるの!?まさか花宮真の噂を同じ部活の山崎くんが知らないわけがない。そんな初期段階を聞きたいわけじゃない。はず。

「性格とかほらなんかあんだろ?シュミとか、好きな音楽とか」

一言でいうとどんなヤツだよ!!!


「病的に性格が悪い」

ぽかんとする山崎くんを無視して、わたしは席を立った。山崎くんの頭が混乱しているのは十分に予測ができたが構うもんか。花宮真のトップシークレットを教えてあげたんだから感謝しなさいよね!


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