◎メリクリ(巻島)


「もしもし、巻ちゃん!メリークリスマス」

『メリークリスマス…ショ。』

「日本のクリスマスはもうあと少しで終っちゃうんだけどね!それより巻ちゃん!届いたよ!びっくりしたよ!」

今日の午前中に巻ちゃんから届いたエアメール。巻ちゃんにしてはなんだからしくないクリスマスカードかなと思って封を切った中に入っていたのは、なんと飛行機のチケットだった。びっくりして何度も確認したけれど、それは間違いなく日本とイギリスを繋ぐ2枚のチケットだった。何のメッセージも入れられていないたった2枚のチケットの簡素な封筒の中身に反比例して、それはとても重みのあるプレゼントだ。

「こんなに素敵なクリスマスプレゼント…凄く嬉しいけれど、私が貰っちゃっていいの?」

『オマエ以外に誰がくるんショ』

「だって私が送ったクリスマスプレゼントなんて…」

何の捻りもないただの手袋だ。手袋の切り替えの繋ぎにすっと入っている赤色が巻ちゃんの髪に入っているメッシュみたいで素敵だなと思ったけれど、こんな素敵なプレゼントをもらった後ではもしかしたらインパクトが足りなかったかもしれない。とは言っても、飛行機のチケット以上にインパクトが与えられそうなプレゼントは今の私では思いつきそうにもないのだけれど。

『実は昨日届いた。さっそく使わせてもらってるショ。』

小さな声でありがとうと言われ、なんだか今すぐ巻ちゃんに会いたくて仕方なかった。このチケットを使うのは来週。そのまま一緒にイギリスで年越しが出来るなんて夢のようだ。

『…そのチケットはオレの我儘ショ』

「え?」

『オマエの年末年始の予定、全部チャラにさせてこっちこいって言ってンショ。それに勝手に付き合わされてンだから、使うのも使わないのもオマエの自由にすればいいショ。』

「な、なに言って…そんなの絶対使うよ!もう荷造りスタートしたよ!」

『クハッ 急かしてワリーな』

確かに朝から声をあげて驚いたけれど、間違いなく人生で一番素敵なプレゼントになった。大事に持っていないとどっかに行ってしまいそうな心もとないたった2枚のチケットが、巻ちゃんの所に繋がっているなんて。
どこでもドアが欲しいって、もう100万回は思ったけれど、どこでもドアじゃきっとこのチケットの重みの意味すら気付けない。

電話の向こう側の、すごくすごく遠い場所で学校のチャイムが鳴る音が聞こえた。

「巻ちゃん、素敵なクリスマスプレゼントをありがとう。」

『こっちに何でもあるから、余計な荷物つめすぎんなショ。』

気づいたら日本のクリスマスはもう終ってしまっていた。夢の様なチケットは、それでも消えずにきちんと私の手の中でしっかりと存在を主張したままである。

巻ちゃん、メリークリスマス!



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