◎メリクリ


◎メリクリイブ

「終わらない、本当に終わらない…かもしれない…眠い。寝たい。本当に終わらないかもしれない」

「年内課題提出ご愁傷様」

「ケーキ食べたい、いや寝たい。本当に寝たい。ピントが合わない。なんなの?なんなの?クリスマス提出日ってなんなの・・・」

「お前三日前にもケーキ食ってただろ。」

「伊勢丹の…伊勢丹のケーキ食べたい。イチゴが乗ったやつ。サンタも乗ってて、クリームたっぷりの6号サイズ」

「パーティーでもする気のサイズじゃねーか」

「一ヶ月・・・いや先週の私の首しめたい。なんで?なんで遊びに行っちゃったの?」

「バカだからに決まってんだろ」


ライフがゼロなのに、マイナスまで叩き落としてくる花宮くん。


◎メリクリ

「ただい…ま。出せた…課題出してきました。走った。ギリギリで駆け込んでダッシュしました。」

「…クリスマスにおまえほどブサイクな顔の女いねーぞ」

「クリスマスに、そんなセリフ投げかける彼氏も花宮くんだけだと思うんだけど!?」

「…待て。」

「ん?」

「おまえ今日飯食った?」

「…カフェオレ飲んだよ?」

「まさか朝摘んでたチョコ以外食ってねぇとかバカな事言わねーだろうな?」

「カフェオレ飲んだよ!?」

「おっまえ…ハァ ブスなんだから顔色くらいなんとかしろ。」

「もうブスって言うのやめて!!!!!…アレ?」

「あー…」

「冷蔵庫にケーキ入ってる…!嘘!ケーキ!クリスマスケーキ!」

「食いたかったんだろ?」

「すごい!ホワイトチョコにラメついてる!可愛い!すごい可愛い!嬉しい!ありがとう!」

「飯食ってからな。手洗って来い。」

「はーい」



最低最悪なクリスマスを送ると思っていただけに、すごく嬉しいサプライズ。ケーキのサイズは希望した大きさではなかったけれどそこは仕方ない。それでも箱からチラ見えしたケーキにはサンタもイチゴも乗っていた。これを人で溢れかえっている百貨店の地下で花宮くんはひとりで並んで購入したんだと思うと、らしくなくてなんだかおかしい。鏡に映っている手を洗う私は、口元がゆるゆるしている。

昨日の私は、先週遊びに行った自分の首をしめていたけれど、無理をしてでも混みあう百貨店に友人と行ったのは正解だった。あの時友人に誘われて行ってなければ、手ぶらのクリスマスになっていたに違いない。自分の部屋のクローゼットにこっそりしまってある花宮くんへのプレゼントを持って、キッチンの方からいい匂いがしてきた夕飯と一緒に、小さなクリスマスディナーを始めよう。

花宮くん、メリークリスマス!



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