◎あまやかす


もう我慢出来ない!飴くらいならいいよね!袋を取り出し破ろうとした瞬間、
「バァカ、誰だよダイエット宣言したのは」
鼻で笑いながら見てくる花宮くんに、思わず袋に入った飴を投げつけた。
「もう開けちゃったよばかぁ!」

遡ること1時間前、唐突にダイエット宣言したわたしに花宮くんは聞いてるのか聞いてないのか、生返事をしてきた。ふんっ今に見てろ!絶対痩せて夏までにはナイスバディを手に入れてやるんだから!今年こそプールに行く勇気が欲しい。そう、やるからには今!今こそやるべきだ!

明日やろうは馬鹿野郎〜ってよくいうから、さっそく腹筋を始めた。10回くらいで腹筋辺り痛くなってきた。あれ、わたし全然筋力ないのか・・・?
中学の頃、部活で筋トレしてる花宮くんをがっつり見てた。基礎練っていう毎日決まったトレーニングをこなす大勢の部員の中で、花宮くんもがっつり腹筋とかシャトルランとかやってて、その度に男の子だな〜と思って見とれてた記憶がある。中学生のわたしだって腹筋くらい出来たけど、部活だって部員だったわけじゃないし、繰り返しするようなことはなかった。だからか、今、とっても腹筋というものが自分に向いてないことが判明。

「根性ねーなー」
「花宮くんだって現役引退してんだからもう出来ないんじゃない?」

サークルでバスケしてたって、どうせ筋トレなんてやってないんでしょっていう意味をこめて言い返したら、昨日オレの腹筋みただろバァカって言われた。悔しい。

わたしだって、毎日続ければ、いつかは10回が50回になる日だってあるもん。痛む腹筋を抑えながらごろんとしたら、二の腕もまれた。なによ、脂肪の塊って言いたいの?

「どっこもかしこもほんと柔らかいな」

二の腕に引き続きお腹と内もも辺りも触ってくる。ダイエット促進してるの?全身無駄な肉ばっかりあるの自覚しろって言ってるの?

「女の子は男の子より脂肪あるの!しょうがないの!」

花宮くんの鍛えられた手足やら腹筋に比べたら、わたしの全身なんて無駄なものしかついてない、必要な筋肉なんて全然ついてない。でも仕方なの!女の子だから仕方ないの!
精々続かない努力頑張れと言って自室に行ってしまった。絶対痩せてやる。

けれど食べたいという三大欲求を抑制出来ないのは仕方のないことで、ひとつくらい・・・と思って手を出したのを見計らって花宮くんに見つかった。そして理不尽な八つ当たり。完全に面白がられてる・・・

「口寂しいんだもん」

言い訳みたいだけど、事実だし。お腹はすいてないのに、何か口に入れたくなっちゃうんだもん。がじがじ指を噛んでたら、やめろって言われて代わりにちゅーしてくれる、エロい方の。んっ、って声上げたら口離された。ちょっと息上がっちゃった。

「鼻で呼吸しろよ」

そ、そうは言われても難しい。酸素欲しい時に鼻で息するの難しい。もう限界ってなっても追い詰めて攻めるのが楽しいのか離してくれない時もある。キスばっかりは練習しようがないんだよ。
呼吸を整えるわたしの口に何かを入れてきた。眉をひそめるわたしに構わず、もっとぐっと押し入れられて口内にいれてきた。あれ、さっきの飴だ。

「ダイエットもいいけど、抱き心地悪くならない程度にしろよ」

口の中に広がる甘さを堪能しながら、ダイエットの決心すら無かったことにしてしまいたいことを言われて、飴をがりっと噛んだ。いきなり決心が揺らぐよ。飴でもなくお菓子でもなく、一番のダイエットの敵は花宮くんだ。
でも、ダイエット宣言してれば、口寂しいって言う口実が出来るから、しばらくはこのまま頑張ってみようかな。



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