◎かいもの
花宮くんの自室には本が沢山置いてある。各自、小さな自室というプライベートな空間を持っていて、わたしはあってもなくてもどっちでも良かったんだけど、部屋を選ぶ際に花宮くんが「部屋中小物やらアクセサリー置かれたらたまんねー」と言われた。わたしの実家の部屋を見ての判断なのかもしれないけど、確かに花宮くんの実家の自室に比べると余計な小物は多い。でもしばらく過ごすうちにやっぱり自室は必要だということに気づいた。わたしの私物の多さがやばい。余計なものは実家に置きっぱなしのつもりでも、ここで暮らせば自然と物は増えてくわけで、こないだわたしの部屋に入ってきた花宮くんが、ほらな?だから言っただろ?みたいな空気出してきて黙るしかなかった。
そんな花宮くんにも私物はある。特に本棚にはわたしが知らないような本も沢山ある。わたしも本読むけど、根本的にジャンルが真逆。花宮くんがどんな本読んでるのか知らないけど、絶対にファンタジーなんか読まないと思う。あと少女漫画。
こないだ、絶対ぜったい面白いから、少女漫画読んで!って言ったらとりあえず読んでくれたみたいだけど、「だからおまえの頭ん中、花畑なんだな」って言われた。どういう意味だよおい!
なんでわかってくれないのかな、とその漫画を読み直しながらベッドでごろごろしてたら花宮くんが部屋入ってきた。ノックして!
「充電器貸せ」
どうやら充電器をご所望のようだ。残念使ってます!わたしのアイフォンにささってる充電器を見つけた花宮くんは、有無をいわさずひっこぬいて自分のに付け替えた。
「横暴すぎる!」
「おまえ今使ってねーだろ」
どうやら居座る気らしく、伸ばしてた足を置くに押されて空いたスペースに座ってきた。今漫画いいとこなんだけど。気にせず漫画を再開しだしていたら、腹の辺り触ってきた。
「くすぐったい!」
ふんっと笑ってる気がする。コイツめ・・・
仕返しとばかりに起き上がって花宮くんの横っ腹をつーっと触る。ひっと言って手つかんでくる花宮くん、なにこれ可愛い。
「あらあら花宮くんは横っ腹が弱点ですかー」
「おまえは腹に肉ついたんじゃね?」
は?ついてないし、むしろちょっと痩せたし、視線を下にずらした瞬間、がばっと押し倒された。なんだこれ。
「え、欲求不満だった?」
「あー、そうかも」
気怠く髪をかきあげる花宮くんに不覚にも見惚れた。ほのかに色っぽい発情花宮くんに耳の後ろをなめられる。真昼間からまさかやらないよね?と思いつつ、されるがままに身を任せてたけど、このままにしてたら喰われる。それはまずい、まだ買い物行ってない。ぐぐっと手を押し返そうと力を入れるがわかってたけど無理だ。力じゃ勝てない。
悔しいことに、今でもサークルでバスケをやってる彼に形勢逆転は出来ない。一応静止を促すものの、聞き入れる気がないのか、Tシャツの裾から侵入してきた手でお腹から上に向けてさすさすされる。ひいいいいその気にさせないで!
「ま、まって花宮くん、せめて夜まで待って」
「おまえが自覚させたんだろ、責任とれバァカ」
体力でも口でも勝てないわたしは、諦めて無駄に体力を使うのをやめた。絶対買い物に行ってもらうからな!
戻る