◎びちょびちょ


「た だ い ま!!!」

れおちゃんと別れてまっすぐに帰宅すると6時前に家についた。花宮くんの靴は玄関に揃えてあって家にいるらしいのに返事がない。わたしが家を出る時はまだ家にいたけど、今日は外出したのかそれともこないだ本をごっそり買ってきていたから読書に熱中したのか。なんで返事ないのよと息巻くがすぐにシャワーの音が微かに聞こえてきてどうやら早めの入浴中の様だ。

リビングには数冊本が積み重なって置いており、冷えたコーヒーが置いてある。ソファの横に荷物と脱いだコートを置き、そのままお風呂場に向かった。

「ちょっと花宮くん!何のんきにシャワーなんて浴びてるのよ!」

ノックもせずに開けたにも関わらずどうやらわたしが奇襲をかけるのは想定済みだったらしい。特に驚いた様子も見せない。むしろわたしが湯気の攻撃をくらった。

「帰宅そうそうそれかよ」

ザーザー流れるシャワーを浴びる後ろ姿からちょっとだけ振り返り流し目を寄越される。くっ水もしたたるなんとやら。

「わたしの二の腕にキッ、キス、マーク…が…ついててわたしもうすごい恥ずかしい思いしたんですけど!?」

面と向かってキ、キスマークなんて恥ずかしすぎて口ごもる。だんだん声が小さくなりつつも最後まで主張したわたしにあぁ、て。あぁってなに!?

「なんだよ、気付かずに出かけちゃったの?いろはちゃん?」

ニヤニヤと。笑う顔はおいおい間抜けも大概にしとけよなと、言っている。こんにゃろ。
もー我慢出来ないと思ったけども、こんなお風呂場で言い合ってても仕方ないなと、どんどん湯気で浴室だけじゃなく洗面台の方まで白くなってきた様子を見て冷静になってきた。このままじゃリビングまで行ってしまって色々と湿気てしまう。

後でちゃんと理由吐かせるからねと言って、自ら開けた扉を閉めようと縁から脚をおろそうとした途端、浴室から花宮くんの濡れた手で二の腕をがっつり掴まれる。びっくりして身をこわばらせながら、今日散々恥ずかしい思いをして意識しまくりの二の腕にまた思考がもってかれる。冬場で絶対見つからないとはいえ、電車内は気が気ではなかった。

「明日、まさか予定いれてるとか言わねーだろうな」

今!?それ今聞かなきゃだめなの!?と言いそうになるが、かろうじで首を横にふるだけに留めておいた。明日はホットケーキでも焼こうかなと思っていた。

「じゃぁ入れ」

ぐいぐいと引っ張られ、慌てて体に力をいれる。今!?それこそ今!?

「ま、まってまって待って!!」

結構頑張って抵抗しているのが気に食わなかったのか、一回力を緩められ油断した所で両脇に腕を差し込まれ引きづられる。ちょおおお!?と声を出しても腕と違って体持たれるとどこで踏ん張ればいいのか分からず、浴室に持ち運ばれた。しかもストッキングのまま。濡れた床に気持ち悪いと思うがいきなりここでストリップ始めるわけにもいかず、じわじわ塗れる指先がきゅっとなる。

「わたし服着たままなんだけど!」
「じゃぁ早く脱げ」

脱げ!?ここでストリップショー!?冗談!

「ストリップはむり!」
「…着たままヤんのがシュミか」

スカートの中に手を這わせられてストッキングの上から太ももを触られる。変態と言いたいがそれどころじゃない。すでにふくらはぎまで水が飛び散っていて、ところどころ色が濃くなってきた。

ぐっと腰をもたれているというか、拘束されているともいう。花宮くんの胸元をぐいぐい押したのも気に食わなかったらしい。太ももに軽く爪たてられて、そのままウエストまでツっとなぞられる。ストッキング破るのはやめて!今月すでに3本もダメにしてるから!!!

「脱ぐ!脱ぐから!」

諦めよう。もう逃げるのは諦めるけど、なんとかストッキングは死守しよう。降参という意味もこめて力をぬくが、腰は抱えられたまま。太ももを彷徨う手がくすぐったい。花宮くんの顔をお伺いするが、早くしろと言いたげに見てくる。いやいや花宮くん、腕解いて。

「脱いでくるからちょっと待ってて?」

かわいくお願いしてみた。遠回しに腕解いてと言ってみた。

「ここで脱げ」
「ひっ」

花宮くんはどうやらストリップショーさせる気満々らしい。躊躇していると、スカートの下を徘徊していた手がストッキングにかけられ、太ももまで一気に下げられる。破ける!と、ほんとにここで!?という思いにどうすることも出来ないまま、硬直していると壁に背中をもたれかかるようにさせられた。するすると濡れたストッキングが足元まで降ろされそれと一緒に花宮くんがひざまづく。ところでひとり裸の花宮くんに羞恥心はないのだろうか。

足首をもたれ、右、左とストッキングを脚からぬかせると、腕を伸ばして浴室の外へとぽとり。よかった破けなくてと思いつつも、ほんとにこのままお風呂だけですむはずないよねと半ば諦める。

「ほんとは、これから花宮くんに今日の写真見てもらったり、れおちゃんと何したか聞いてもらおうと思ったのに。お土産だって買ってきたのに。花宮くん、造花茶って知ってる?お湯の中でお花が咲くんだよ」

勝手にたてた今後の予定を申告するが、花宮くんに中断する気はないらしい。今度はスカートのチャックを降ろされ、若干濡れたスカートもストッキングと同じ末路を辿った。

「全部後だ。」

どうやらお話を聞く気はあるらしい。ただし今聞く気はさらさらないらしい。

「花宮くん、今度は一緒に中華街に行こうね?」

返事の変わりにキスをくれた。コスプレはぜってーしねーという声にしばらく笑いがとまらなかった。


戻る
top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -