◎ぎゅうぎゅう


今日はれおちゃんと中華街に来ていた。前から中華街行こうね〜って約束してたけど、れおちゃんとわたしの都合がなかなか合わなくて久しぶりの再会となった。

「や〜ん久しぶり!あの変態猛獣と一緒に暮らしてるなんて、大丈夫??」

待ち合わせ場所でぎゅうぎゅうと抱きしめられる。れおちゃんの高身長と艶やかなお顔立ちに周りから視線がぐさぐさくる。

「久しぶり、れおちゃん。花宮くん生活能力なさそうであるから大丈夫だよ!」

も〜そういうことじゃないわよ〜〜と言ってわたしを抱きしめていた腕を開放する。れおちゃんの優しく細められた目にほっこりする。わたしより女性としてのポテンシャルが高くて羨ましい。

「それでじゃぁ早速向かましょう!」

仲良く腕を組んで、中華街へと足を踏み入れた。






今日れおちゃんと中華街に来たのは、チャイナドレスを着る名目があってこそだった。れおちゃんの友達がカメラマンとしてアルバイトをしている店は、中華街入ってすぐにある場所で、平日も相まって混雑している様子は見受けられなかった。


「この中からひとつ選ぶのは・・・すごい難しいね・・・」

サイズ別に色とりどりのチャイナドレスがラックにずらりと並んでいる。反対側には民族衣装と呼ばれる衣服や、ミニチャイナドレスまであるから時間がかかりそうだった。

「そうね〜〜ほらいろはちゃん!色が白いからこれなんかどう?」

色が白いというよりも、家に引き篭っていると言われた方が適切な気がしなくもなかったけど、毎年死ぬ気で紫外線から死守しているので褒められた気になり言われたままそのチャイナドレスを受け取る。白地に金の刺繍はとっても可愛いけど、白という膨張色に怖気づき、他に赤と青を持って試着室に入る。ちなみにれおちゃんは、紫と黒を手に隣の試着室に入った。もちろん女性用チャイナドレスを。


「いろはちゃん決まりそう?」
「う、ん、なんとか入ったけど、これ後ろチャックで・・・・」

チャイナドレスのタイトさに慄きながらも気合で着た。これずっとお腹へっこめないとやばい。

「上げてあげるわよ」

試着室がぴったり隣同士で布を隔てだだけの簡素な作りである為、ひょいっとカーテンをめくるだけで試着室が繋がる様になっている。

「れ、れおちゃん、とびきり似合ってるよ・・・!!」

カーテンをよけて現れたれおちゃんのチャイナドレスの着こなし具合に思わず下から上までじっくり凝視。いくられおちゃんが美しくったって、花宮くんと同じ現役バスケ部選手。それなのにロングチャイナドレスのお陰で、ごつくなりがちの脚や二の腕が隠れているのと、タイトなシルエットがひきしまった体を見せつけるように這わされていて、正直見惚れる。高い身長がロング丈を殊更似合うように仕立てている様だ。

「ありがと。ほらさっさと後ろ向いちゃいなさい」

ほらほらと促されれおちゃんに背中を向ける。正直質素な下着をちらちとでも見せるのは忍びなかったが仕方ない。とにかくチャック上がって!という思いでじっとしていると背後からや〜んという声がかけられる。な、なに。

「ちょっといろはちゃんったら!見せつけてくれちゃって!」
「え?なになに!?」
「も〜ほらこっからここ、すっごいキスマークの数!」

肩から二の腕を辿って肘まで、つつっと指を滑らされ思わずぎょっとする。まさかと思って体をひねって鏡を覗きこむと、信じられない光景に顔から火がでるかと思った。

ちょ、ちょ、ちょ!!!!ちょっと!!これ!!!どういうことなの!!!

「ちょっとまって!誤解なの!誤解なの!!」
「隠さなくったっていいじゃないの。今日はせっかくのお休みだったから、もしかして私嫉妬されちゃったかしら〜」

二の腕に散りばめられた、アザ通り越して斑点みたいな模様がいっそ気持ち悪い模様みたいで絶句する。朝着替える時に、一応、本当に一応鏡を覗きこんだ時は気づかなかった。胸元にも首筋にも間違っても赤い跡なんかないからオッケーオッケーという気持ちで家から出た。それなのに、それなのに、こんな正面からは見えない場所につけてくるなんて・・・!!一体いつつけられたの!?

ひいいいとい叫びだす手前のわたしをヨソに、ちゃっちゃとチャックをあげようとしているレオ姉を引き止める。

「ま、まってわたしこんな二の腕丸出しのなんて着れない!こっちの青いのなら袖あって隠せるし、こっちにする!」

洋服の時は好んで着る青色が、思ったほどしっくりこなかったけどこの際仕方ない。そっちのチャイナドレスは横チャックで着るのも楽だし、そっちにしようと断ると、思いっきりチャックを引き上げられた。強引…!

「何言ってんの!断然白よ白!こっちになさい。こんな腕のキスマークなんかちゃちゃっとコンシーラーで消してあげるわよ!」

キスマークとかそんな可愛ものじゃないと言いたかったがコレ以上言うのも憚られ、お店の人に借りたコンシーラーで言葉の通りちゃちゃっと消してついでにファンデーションで軽くはたいてもらったら思ったより綺麗に消えてくれてほっとした。正直こんな会話はひとりしかいないお店番兼カメラマンさんにはバッチリ聞こえてるはずだし、今更感もあったがさらして撮影するなんて耐えられなかった。

カメラマンのおばさんは凄く面白く、撮影は緊張したけどとっても楽しかった。中華風番傘やたっぷり羽根のあしらった扇子、さらには煙管などなど。一度は持ってみたい憧れの小物の数々に、それらを使って撮影した写真を選んで印刷してもらった。れおちゃんは想像通りとっても綺麗で、撮影が終った後に何度も写メらせてもらった。こんなに紫のチャイナドレスが似合う人は絶対いない。

ほどよく疲れたわたしたちは、撮影したお店の近くにあるチャイナカフェに入ることにした。わたしの疲労の要因は、十中八九、花宮くんのせいだけど!!


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