◎すんすん続


自転車漕いで15分。不二家にきた。
ペコちゃんの顔がかくかく揺れてる。でもこないだと着てるお洋服が変わってる。可愛い。

もういっそケーキバイキングして帰ってやろうかな…

ちりんちりんというベルの音を鳴らしながら店内に入ると、目的のチーズケーキ以外にもキラキラと光るスイーツがずらり…これは迷う。

期間限定もののとろけるチョコケーキを買うか…それともプリンサンデーも買っちゃおうかな。そんなに食べれないかな。花宮くん、カカオ100%じゃないけどチョコケーキ買っててあげようかな。って、花宮くんのケーキ買いにきたわけではない…!

「そんなとこで何しとるん?」

うーんうーんとショーケースとにらめっこしていたら、後ろから声をかけられた。

「今吉さん!お久しぶりです!」

珍しいとこで鉢合わせますね、と聞こうとしたら今吉さんの周りに友達と思われる男女がちらほら…ほんとに珍しいな。
今吉さんと不二家なんて、似合わないにも程がある。

「なんや花宮おらんの?休日なのに珍しいな。」

今吉さんとは花宮くんを通しての知り合いだから、仲介している花宮くん不在で今吉さんと話すのは数えるほどしかなかったし、必ず傍には花宮くんがいたから、どうやらわたしたちがいつもワンセットだと思っているらしい。

「そんなことないですけど、今吉さんこそ珍しいですね。」

こんなファンシーな店で、とは言えなかった。

「まぁワシは付き合いっちゅうか…初めてきたんやけど。花宮によろしゅうな」

あと寒そうやから、マフラー貸したる。と言って有無を言わさずマフラーを貸してくれた。謎優しい。相変わらずのらりくらりとしながら、彼は待たせていた友達と店を出て行った。

結局わたしは散々迷った末にチーズケーキをホールで買った。うん、帰って花宮くんとお茶にしよう。






「ただいま〜」

ぬくぬくとした室内が冷えたつめ先をじんわりと温める。そしてなぜか花宮くんはわたしの自室から出てきた。

「掃除機、かけといた。」

ありがとうと返事をすると、近寄ってきた花宮くんの眉間がきゅっとよった。

「…おい、どこ寄り道してきた。」

「どこって…不二家に行ってきたんだよ。」

ほら、と言ってチーズケーキの入った箱を掲げる。
花宮くんの分もあるよ〜と言うと、首にまかれていた黒いマフラーを剥ぎ取られた。

「いろはのじゃないだろ。」

「あ!それ今吉さんに借りたの!」

益々眉間にシワがよる。ちゃんと洗濯して返すよ!?

「なんで不二家行ってそいつの名前がでてくんだよ。」

「わたしも意外!って思ったけど友達とご飯してたみたい。」

だからなんでと言いかけて、またハーーとさっきより深い溜息をつかれる。
黒いマフラーをぺいっとほおられ、人様のものを!と思っていたら首元すんすん。犬か。

「妖怪クサイから今すぐ風呂に入れ」

「ちょっ花宮くんの先輩じゃないの!?
ていうかやだよ!チーズケーキ食べるよ!」

「風呂入ってからにしろ。マーキングされてるみたいで気分悪い


そしてなぜか一緒にお風呂に入ることになったわたしは、花宮くんにがっつりマーキングをされた。キスマーク的な意味で。


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