あの屋上の一件から1週間。
部活も始まり、本格的に高校生活が始まったという今日この頃。
相変わらず沖田先輩も沖田先輩でかなりしつこい。自分が学園の王子だとわかってるのか心配だ。なんだってまあ、こんな小娘に、と言いたくなる。


「あ、なまえちゃん!」
「……沖田先輩」


まず、あの日を境に私と若葉、そして沖田先輩と斎藤先輩は屋上で一緒にお昼を食べている。もちろん、沖田先輩は私と二人きりを望んでいたけど斎藤先輩がそれを許さず、最終的に四人で食べることになった。


「どうしたの?なんか元気ないね」
「沖田先輩、心労って言葉知ってますか」
「うん、知ってるけど。だから僕達に気を使わなくていいって言ったじゃない」
「だから、そういう意味じゃなくて…」


全く、この先輩はファンクラブの存在を少しくらい気にしてほしい。
いわずもがな、屋上には沢山、沖田先輩のファンクラブの女の子たちがいる。矢のような視線が突き刺さってくるのは言うまでもなく、それを見てみぬフリをして私に構う沖田先輩はかなり人が悪い。まあ、だからといってそういうのに怖じ気づくタイプじゃないけれど。


「沖田先輩がファンクラブの子達に愛想振り撒いてくれないと、私、高校生活終わる前に殺されちゃいます」
「あっはは、なまえちゃんが簡単に殺されるような人には見えないけどなぁ。それに、フェアじゃないでしょ?」
「フェアじゃない、って…」
「もういいから、なまえちゃんは黙って僕に惚れさせられればいいの」
「それって、よくないと思います…!」
「うん?なんか言った?」


なんでもないです、と若干ため息混じりに言葉を紡げば「うん、いい子いい子」と頭を撫でられる。…最近気づいたけど、今まで男の人に触れられた事がなかったから、逆になんとも思わなかったんだけど、積極的すぎる沖田先輩のスキンシップの所為で最近恥じらいとときめきを覚えました。はい。


「そういえばさ、うちの剣道部、マネージャー受け入れる事になったんだって」
「そうなんですか?」
「うん。でもさ、決意文に面白いことが書いてあってね」


沖田先輩はニタリと笑うと、ブレザーのポケットから紙を出すと私の方を見て、


「『同じ学年であるみょうじさんの試合を見て、この人の役に立ちたいと思い、剣道部のマネージャーに立候補しました』って、なまえちゃん、女の子からも人気だね」
「総司、人の決意をからかうようなことはするな」
「さ、斎藤先輩、ごもっともです」
「なぁにナマエちゃん。君も僕が悪いっていうの?」
「悪いっていうかなんと言うか………はい、沖田先輩が悪いです」

「ていうか、その言い方まるで朝緋が男子からも人気みたいじゃないですか〜」とナマエが囃し立てた。うん、実は私もそう思ってた。すると斎藤先輩が口を開いた。


「たしかに、そのような言い方だったが、あながち間違ってなどない」
「「え?」」
「もしかしてなまえちゃん、知らないの?」
「知らないの、って……」
「今じゃなまえちゃんは桜華陵学園のプリンセスだよ?男性教師に隠れファンが多いって言うし。あ、ちなみにマネージャー希望してる雪村千鶴って子も、人気みたいだけど」


初耳だよそんなの。


「じ、じゃあやけに屋上に男子生徒が多いのは、沖田先輩のファンクラブの子目当てじゃなくて…」
「そう言うことだよナマエちゃん。みーんななまえちゃん目当て」
「え、ええええええ!!!???」


たしかに、なんか廊下でジロジロ見られてたし、なんかシャッター音まで聞こえてたのは気のせいじゃなかったのか…!


「世の中、変われば変わるもんだね、なまえ」
「ソーダネ」
「みょうじ、気にすることはない。何かあればすぐに言うといい」
「あ、ありがとうございます、斎藤先輩」


すると、横からスッ、っと手が伸びてきたかと思うと、沖田先輩が私の卵焼きを摘まんでいった。ああ、最後の1つが……!


「まあ、野次馬が沢山いた方がいいんじゃない?スリルがあって。ん、この卵焼き美味しいね。なまえちゃんの手作り?」
「スリルの問題なんでしょうか…。あ、それはおばあちゃん特製です」
「なまえってば料理出来ないもんね」
「ううう、うるさい///」


とある穏やかなお昼時のこと。



ランチタイム
(朝緋ちゃん、ほら、あーん)
(ちょ、ば、馬鹿じゃないですか沖田先輩!)



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