ぜぇ……はぁ……


「は、原田先生……こ、これで全部………です…」
「おぉ悪ぃな、休んでていいぞ」


みょうじなまえ、ただいま体育大会実行委員として絶賛原田先生にパシられ中、です!


「にしても、な、なんで私がこんな肉体労働を……!」


原田先生は女の子に優しいから、女の子にこんな肉体労働させるような先生じゃないはずじゃ…!
という心の声をどうか読み取ってくれないだろうか原田先生よ。

ことの始まりはとある手違いと私のズボラさが招いた結果だった。
体育大会本番一週間前である明日は体育大会の予行練習の日になっている。授業も免除で(すげえ嬉しい)午前中を使って体育大会当日の流れを確認し、午後は個人や団体競技の練習、といったスケジュールでありそのために実行委員は放課後の今精を出して準備に取りかかっている訳です。

当然高校生にもなれば男女の力の差は一目瞭然、実行委員男子はテント張りや明日使う大きな道具を倉庫からもってきたり、女子はゼッケンやハチマキの準備などをまかされていた。私はクラスの人数分ゼッケンとハチマキを仕分けて、グランド端の雑草を抜いたりなど自分の仕事をこなしてさあ部活に行こう!(個人種目決めの件で最近部活に出ていなかったため)と意気込んで荷物を取りにいったらあら不思議。見事に部活の道具を家においてきた私は自分の馬鹿さ加減に呆れ果ててしばらくその場に立ち尽くし、仕方なしに家に帰ろうとしていた。

…のだが。


「頼めるやつがみょうじしかいなかったんだ、仕方ないだろ?それに剣道部員としての腕っ節を買ってるんだ、喜んでいいんだぜ?」
「嬉しいよな嬉しくないような…」


学園の至る所に設置してある体育倉庫。
そこからグランドに一番近くていちばん大きい倉庫に用具を運ぶ。
この(とっても)大事な仕事の役割分担がされていないことに気づいた原田先生がその作業に取りかかろうとしたところ、ちょうど道具を忘れて部活に行けずに帰ろうとしていた私を見つけてしまったのだ。

もうこれは、自分をナイスタイミングと褒めるしか無いのだろうか。


「ま、土方先生には俺が手伝わせたって言っといてやるから、んな不安そうな顔すんなって」
「う〜…、ありがとうございます」


と言ったとたんに大きな音が原田先生のいる倉庫の中から聞こえた。
…さすがに私じゃ玉入れのあれや高飛びの支柱などをすでに跳び箱やらサッカーボールやらがひしめき合う体育倉庫には入れられないのでそのへんは原田先生にお願いした(というか私じゃ不可能だ)のだけど大丈夫なんだろうか。


「せんせー大丈夫ですかー生きてますかー」
「悪ぃな、驚かせちまって」


そろーりと倉庫をのぞけば、薄暗い中にバスケットゴール(倒れてきたのだろうか)を背負ってる原田先生がいた。
なに、してるんだろう。


「…倉庫のなかぐっちゃぐちゃじゃないですか」
「そりゃあ、まあ、こんなもん倒れてきちまったらしかたねえだろ」
「(もとからぐちゃぐちゃだったから倒れたんじゃ……)」


ほこりっぽい倉庫の足下を確認してから倉庫に入って、元に戻せなさそうにしている原田先生を助けてあげる。
持ち上げて戻しながらわかったけど、うん、こんな重たいものふっつーの女子高生じゃ無理だ。原田先生は担任でもあるけど剣道部の副顧問だから私が剣道の推薦でこの学校に入ったことも知ってるし、それ故の……筋肉量だとも知って私を手伝わせたんだろう、理由はわかっていても素直に喜べないのは私が自分の太い腕がすこし気に食わないから…だろう。

にしても


「……落ち着かない…」
「お?なんか言ったか?」
「い、いや何でも無いです!」


薄暗い体育倉庫に原田先生とふたりっきり。
数ヶ月前までの私だったら塵も気にしなかったんだろう。だけど…沖田先輩と日頃からあんな絡みをしていると私も当然少しずつは男を意識するようになる訳で……!


「みょうじって…思ったよりも子供っぽいんだな」
「へ?」
「顔に出すぎだ、お前。気づいてねえのか?」


こ、子供っぽい?顔に出ている??
いったい何のことだろう!あ、落ち着かないってこと?じ、実は間近で話したこと無くて緊張してるのが子供っぽいって?へ?い、いやだって確かにナマエの言う通り原田先生はたしかにかっこいいから…!


「落ち着かねえ、って顔してるな」
「い、いやそんなこと」
「嘘つくなって」
「うう嘘じゃないですよ!」
「じゃあ、…俺の目を見て同じこと言えるか?」


原田先生はそういって私の顎をそっとつかんで自分の顔へと引き寄せた。
えーと、うん、ちょっと待って?


「嘘じゃないですよ〜ってか原田先生〜?顔が近くないですか〜?」
「みょうじ、顔真っ赤だぞ?」
「…っ!?!?」


な、なんですかね!この状況は!!!

薄暗い倉庫に!先生とふたりっきりで!ましてこんなに顔が近くて!ええそりゃ顔も赤くなりますって!!!
一気に恥ずかしさが襲ってきて急いで顔を隠そうと両手を出すと、みごとに原田先生に両手を掴まれてしまいあろうことにそのまま壁に縫い付けられてしまった。





来たれ!体育祭☆3



(なまえちゃん何してるのかなぁ)
(会いたい、な)



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