体育祭2週間前。

個人種目を決めなきゃいけないんだけど……いやね、うまくいってたらこんな顔してませんって本当。あれがやりたいこれがやりたい、ってまあどんだけみんな自己中なんだよって話です。特に男ども。少しは譲ろうとか思わないのか日本男児諸君よ。


「…みょうじさん、口に出てるよ」
「気のせいじゃない?」
「……そうだね」


放課後、土方先生に断りを入れて部活を休ませてもらった。そうなったのも個人種目が決まらないからであって…副実行委員の吉田くんに手伝ってもらっているが、もはや手伝いではなく完全にバトンタッチだ。


「ふぁあ……眠い」


あと半分くらいで終わる。そう思えば気が楽なんだけど、実際私は仕事をしてない訳で。あ、別に全くやってない訳じゃないけど!


「あんだけ寝たのによく言うよ」
「…ま、まだ寝たりないのかもー…なんて」
「へぇ、また寝るつもり?」
「………あ、あはははー…」


バスケ部らしい吉田くんは、部則が厳しくて部活にどうしても出なければいけないらしく。先に仕事をしておいてと頼まれていたはいいものの、気付けばジャージ姿で冷めた笑顔を向ける吉田くんとこんにちわって訳で。どうやら私はぐっすり寝ていたらしく、当然仕事も何一つ進んでいなくて…


「まあみょうじさんじゃ頼りないから副実行委員に立候補したわけだし、早速効果が出て良かったよ」
「…だ、だからごめんってば!」


はぁ、とため息を1つ。
こんなんでやってけるのかなあ、あたし。間違ってもまた職員室で話題にはなりたくない。この前の古典のテストでどれだけ恥ずかしい思いをしたか…!


「……みょうじさん」
「はい?」
「…君は、なにも気にしなくていいよ」
「え」
「みょうじさんが失敗したとして、フォローするのが僕の役目だから」


「だから、気にしないでいいよ」と、吉田くんは照れくさそうに言った。なんだかなぁ……それって遠回しに仕事するなって言ってるようなもんじゃん。


「あ、ありがとう」
「どういたしまして」


そういって爽やかに笑う吉田くんの笑顔は、すごく眩しかった。けれど、ちょっぴり気に食わなかったりする。



+++



「あとは、1-3だけか……ってオレのクラスじゃねえか」


体育祭の提出資料の回収をしていたオレは、未提出のクラスを順に回って行った。残っていた生徒たちもいなくなり、もう校舎にはほとんど生徒は見当たらない。


「まあみょうじだからしょうがねえっちゃしょうがねえが…吉田もいるのに何してんだ?」


何か揉め事でもしてるのだろうか。気になって教室に向かおうとすれば、なんの音沙汰もない空虚な廊下がそこにあった。不安になって早足で教室へ向かってみるとそこには……


「……!!」


少し開いたドアから覗いてみれば寝ているみょうじに向かって、いとおしそうに首筋に口付けている吉田の姿があった。





来たれ!体育祭☆2



(先手必勝、か)
(土方さんも総司も気付かなきゃいいが…)
(……ったく、胸くそ悪ぃったらありゃしねえ)



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