「文句は言わせんぞ、シエル。これは命令だからな」
「にしても急過ぎません?あ、セントラルに連れてきたのってこれが目的なんですか?」
「そんなわけないだろう、たまたま、だ」


ロイさんは心外だとでもいう様に怪訝な顔でそう言った。
嘘だ、さっき不適に笑ってただろ…!

私がこんなに嫌がるには理由がある。ロイさんもそれはわかってるはずだ。
___私の国家資格取得の実技に立ち合った、実力のあるロイさんなら。

まったく性格が悪い、この人は。


「まあシエルも国家錬金術師になってロイは直属の上司なんだ、命令には従わなきゃならねぇからな」
「職権乱用だっつの……」
「なにか言ったかね鋼の」
「、な、なんでもねぇよ」
「……シエルは主に後方支援だ、捕獲は私と鋼ので行う」
「…わかりましたー」


納得せざるを得ない空気になってしまったのでしぶしぶだが了承することにした。
変わらず不服そうな態度の私にエドワードくんの視線が刺さる。……感情の読めないその視線を無視して私はコーヒーカップに口をつける。
するとヒューズさんが得意げに眼鏡をくいっとあげて誇らしそうな顔でロイさんに話しかける。


「おーし、ロイ、もう用件は済んだか?」
「ああ。お前のことを呼んだつもりは無いがな、ヒューズ。用が無いなら直ちに帰りたまえ」
「帰るさ、用が済んだらな!」
「…?」


ロイさんはヒューズさんの意図が汲み取れずに顔をしかめ早く出て行けと目で語りかける。しかしそんなのおかまいなしなヒューズさんは、ロイさんを無視してくるりとエドワード君たちの方へと向き直った。

「君たち、どうせ宿決まって無いんだろ?だったら家に来いよ」
「「??」」


するとヒューズさんの雰囲気が一変。眼鏡がキラリと光り軍服の胸ポッケからまるで武器のように取り出したそれは………一枚の写真。
………そう、愛妻家であるヒューズさんの代名詞とも言える…家族自慢タイムが始まった。


「妻のグレイシアと娘のエリシアだ!!」





王子様はノイローゼ

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