「だぁぁああれが豆粒ドチビじゃぁぁあああああああ!!!!!!!」
「うわあっ!?」
「ちょ、兄さん!落ち着いて!!!あっ、シエルさん!!」


なになに何なのこの人!?
私が手を握った途端に急に形相をかえて叫んだかと思たら、弟の鎧君が止めるのなんてまるで眼中になくなんとこっちに拳が飛んできたのだ。
私はとっさに…というか反射的にその拳を体を横に反らしてかわしてから、その腕をつかんで足を引っかけて、


「っ、おわぁっ!?」


投げ飛ばした。


「いてて…何すんだてめ「兄さんが悪いんだよ!急に殴り掛かったりするから!」
「んなっ!?」
「そうだぞ、鋼の。今のは「だぁぁあ!!なんでそこで大佐が出てくるんだよ!」
「…上官に文句でもあるのかね」
「き、きったねぇぞ!!」
「もう兄さんってば!」
「だぁあああ!悪かったな!」


そういって気まずそうな顔をするおちびと目が合った。…そらされた。
何だったんだろう。私何か言っちゃったのかな?……………………いや絶対何も言ってない。よくわかんない人だなぁ…この人。唯一わかってしまったことと言えば鋼の錬金術師はお子様でおちびさんだと言うことくらいだ。
そんなことを考えているとロイさんは私達をグルリと見回して、私とエドワードが椅子に座ったのを確認すると一呼吸置いて口を開いた。


「さて…。先程、大総統閣下から直々に命令が下ってね、鋼の。なんでも元国家錬金術師で軍への反体制運動に身を投じた奴がこのセントラルに潜んでいるらしい」
「…元?」
「あぁ、名前はアイザック・マクドゥーガル。氷結の錬金術師と呼ばれていた男だ」


氷結の錬金術師…?
前に父さんから聞いたことがある気がする…。


「イシュヴァール殲滅戦の時に我が軍の一員として活躍していたが…戦後彼は国家錬金術師の称号を返上し今に至っている。彼の身柄拘束は最優先事項だ。場合によっては殺さねばならないだろう…やってくれるか?」
「俺は殺すのなんかごめんだ」
「好きにしたまえ。我々が求めているのは君の実績だけだ」


窓辺に立って夜のセントラルを眺めて話していたロイさんはくるりとこちらを向いて、おちび…エドワードに目で問いかける。


「はぁ……ったく、人使いの荒い大佐だぜ。行くぞアル」
「まあ待ちたまえ、鋼の」
「なんだよ、まだなんかあんのかぁ?」


アイザック捕獲に向かおうと腰を上げたエドワードは怪訝そうに大佐へと向き直る。
そんなエドワードの様子など気にも留めない様子でロイさんはリザさんが控えているひときわ大きい執務机に腰掛けて「なにも、鋼の達にすべて任せるという訳ではない」と言った。


「どういうことだ?」
「アイザックの身柄拘束は私も全力で執り行う。これは大総統命令だからな。……だからシエル、君にも参加してもらう」
「……はぁ!?」


そういってロイさんは不適な笑みを浮かべた。





始まりのマーメイド

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