翌日


「報告によればアイザックは昨夜、中央刑務所に潜入した。事態は一刻の有余もならない、必ず見つけ出せ。道路を封鎖し、あらゆる場所を探せ。見つけ次第射殺しても構わん、これは大総統令である!」


大佐が急ぎ足で市街地を歩く隣りを、私と中尉とエルリック兄弟が共に歩く。


「私も、出る!!」
「ヘマしないで下さいね」
「シエル、誰に言っている」
「ははっ、んなの大佐に決まってるだろ!」
「に、兄さん!」
「鋼の、消し炭にされたいかね?」
「大佐ぁ〜?相手は水を操るやり手の錬金術師ですよ?晴れていても無能になる可能性あるじゃないですか」
「なっ!そんなことは、」
「大佐、シエルの言う通りです」


しばらく大佐が落ちていたのは言う間でもない。


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「救護兵、急げ!」
「死傷者五名、本部に報告!」


大分日が落ちて辺りはオレンジに染まる。朝、大佐たちと現場に赴いたはいいものの結局私は誰と一緒に行動したらいいのか言われないままだった。後方支援と言われている手前、のこのこと大佐たちにくっついてアイザックを探すわけにも行かず、手近な負傷者を見つけては得意の錬金術で傷を治して回っていた。


「あの、葵の錬金術師、シエル・カートンです。死傷者はどちらにいますか?」
「はっ!現在死傷者五名の他、負傷者三名、あちらにいます!」
「ありがとうございます」


私は指定された場所に行くとそこには運悪くエルリック兄弟がいた。
…タイミング悪いな、


「エドワードさん、アルフォンスさん、調子はどうですか?」
「シエルさん!」


私の気配に気づかなかったのか、アルフォンスは驚いて私の方を見た。エドワードは私がいるのに気付くと怪訝な顔をし、死傷者であろう人に目を向けた。


「水蒸気爆発だ。水は急激に温度を上げると爆発的に膨張する。人体は70%水だからな……」
「氷結っていうから凍らせるばっかりだと思ってましたけど…どうやらあいつ、近くに水が無いと水蒸気爆発で戦ってるみたいですよ。川辺の兵は氷付けでしたし」
「!?…なるほど、な」
「まあ簡単な話ですよ。氷付けにするには多くの水が必要ですが水蒸気にしてしまえば体積はうんと増えますから少ない水でも攻撃可能、ってだけです。…まあ、どっちにしてもやっかいですけどね」


そう苦笑しながら二人の方を向くと、エドワードとアルフォンスが驚いたようにこちらを見ていた。


「ど、どうかしました?」
「いや…なんつーか…お前のことみくびってたわ」
「は?」
「ボクたちシエルさんに言われるまでそんなこと考えても無かったから…ちょっとびっくりしったっていうか」
「あっはは、やだなぁ、私だって伊達に錬金術師やってるわけじゃないんですから」
「わりぃな」


そういってエドワードは苦笑した。そういえば、エドワードとまともに話すのはこれが初めてかもしれない。
しかし、こうしてる間にもアイザックは逃亡し続け犠牲者を増やし続けている。今は話をしている場合ではない。


「とにかく、これ以上死傷者を増やさない為にもはやくアイザックを捕まえて下さい」
「あぁ、そうだな」
「お二人とも、くれぐれも怪我をしない様にしてくださいね。私の手間が増えるので」
「っ、余計なお世話だ!!」


エドワードはそういってそそくさと行ってしまった。そんな兄を追いかけるアルフォンスは「ごめんなさい、兄さんいつもあんなんで…シエルさんも気をつけてくださいね!」といって足早に立ち去っていった。





鬼ごっこ

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